【書評】AI分析でわかったトップ5%社員の習慣

- インプットポイント
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- AI分析という客観的根拠に基づいた、トップ5%社員の具体的な行動習慣がわかる
- 自身の働き方を見直し、生産性向上や成果創出に繋がる実践的なヒントが得られる
日々の業務に追われながらも、周囲より一歩抜きん出た成果を出し続ける社員。彼らと自分との違いは一体何なのだろうか。こう感じたことはないでしょうか。きっと、才能や環境だけでは説明しきれない「何か」があるはずです。
もし、その「何か」が具体的な行動習慣であり、しかもAI分析という客観的な手法で解明されているとしたら。
今回ご紹介する書籍『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』は、まさにその「何か」を明らかにし、誰もが実践可能な形で提示してくれる一冊です。自身の成長を加速させたい、組織全体の生産性を高めたいと考えるすべての方にとって、示唆に富む内容となっています。

発売日:2020/9/25
著者:越川 慎司
【著者紹介、書籍の特徴】AIを用いて膨大なビジネスパーソンの行動データを分析し、傑出した成果を上げるトップ5%社員に共通する「再現性の高い」習慣を抽出。具体的な行動レベルに落とし込んで解説している。
著者のビジネス系インフルエンサー越川慎司氏は、働き方改革や生産性向上を支援する株式会社クロスリバーの代表取締役社長です。同社は、国内外の大手通信会社やグローバルIT企業等、多様な分野の名だたる企業の働き方改革を手掛けています。そのクライアント企業の中から、25社、計1万8000名の協力を得て、「5%社員」と、そうでない95%の社員の働き方をリサーチし、AIと専門家によって分析し、習慣の違いを抽出しています。
本書の特徴は以下の3点です。
1.AI分析による客観性
本書の最大の強みは、AI(人工知能)による大規模な行動データの分析に基づいている点です。従来の成功法則やビジネス書が、個人の経験則や主観的な観察に依存しがちだったのに対し、本書では数多くのビジネスパーソンの実際の行動ログやコミュニケーションデータをAIが解析しています。これにより、特定の成功者の体験談に留まらない、より普遍的で客観的な「トップ5%社員」の習慣が抽出されています。1万8000名というサンプルから導き出された法則は、読者にとって納得感が高く、自身やチームの行動変容を促すに十分です。
2.即効性のある具体的な行動指針
本書は、精神論や心構えではなく、日々の業務ですぐに実践できる具体的な行動レベルの指針を提示しています。例えば、【仕事を振り返る時間を取っている】【金曜日に見つけた改善タスクを来週やる】といった、具体的かつ計測可能なアクションが数多く紹介されています。これにより、読者は何から手をつければ良いか迷うことなく、読了後すぐにでも自身の働き方に取り入れやすい構成となっています。
3.実行可能性と再現可能性の高さ
本書の冒頭にて「調査を元に導き出した成功ルールは、その後、29社で実証実験を行い、「5%社員」以外でも効果を出した」と述べられている通り、本書で紹介されている習慣は、実行可能性の面で誰でも身につけることが可能でありながら、効果の面でも再現性の高いものとなっています。
【目次と要旨】各節の見出しそのもので習慣の結論を明示
本書では、各節の見出しそのものが、即実践可能な習慣の結論となっています。
また、本文では、見出しの習慣をさらにブレイクダウンした具体的な習慣が提示されていますが、本文内の具体的な習慣も太字になっており、太字を辿るだけでもポイントを網羅することができる設計になっています。
ここでは、章立てと各章の要旨をまとめます。
序章 AIで1万8000人分析してわかった、ずば抜けた結果を出す人の五原則
本章では、【「目的」のことだけを考える】【「弱み」を見せる】【「挑戦」を「実験」と捉える】【意識変革はしない】【ギャップから考える】という、特に重要な5つの原則がまとめられています。第1章以降で提示される習慣は多数ありますが、本章の5つの習慣は、それら全てに通じる原理原則とも言うべき習慣です。
第1章 良かれと思ってやってしまう「95%社員」の行動
本章では、工数をかけることでやった気になるものの、実際には成果につながらない可能性がある、「95%社員」が行いがちな行動の数々が紹介されています。【平日も休日もこまめにメールチェックする】【重要そうな資料を用意してしまう】等です。
第2章 トップ「5%社員」のシンプルな思考と行動
序章で挙げられた5つの原理原則をさらにもう1段階具体化したような、取り入れやすい実践的な習慣の数々が挙げられています。【完璧を目指さない】【完成度が20%で意見を求める】【失敗しても成功しても必ず原因を把握する】【仕事を振り返る時間を取っている】【デスク周りがきれい】等です。
第3章 トップ「5%社員」の強いチームを作る発言
本章では、チームマネジメントのシーンにおける発言やマインドセットが挙げられています。具体的には、【摩擦を避けたら成果は生まれない】【感謝をしっかり表現する】【発言回数は22%多く、発言時間は24%少ない】等があります。
【感想】明日からの行動を変える、具体的かつ実践的なヒントに満ちた良書である。ただし、その効果を最大化するには一工夫が必要だ。
本書の最大の魅力は、AI分析という客観的な裏付けに基づいた具体的な行動習慣が、誰にでも実践可能な形で提示されている点です。たしかに、【完成度が20%で意見を求める】等、本書で紹介されている行動は、全て、読了後すぐにでも取り入れることができそうですね。こういった小さな行動の積み重ねが、やがて大きな成果に繋がるという著者のメッセージには説得力があります。
ただし、本書を読む上での注意点が2つあります。
1つ目は、「習慣」と「成果」の関係性です。
本書で示されるトップ5%社員の「習慣」と、彼らの高い「成果・パフォーマンス」との関係は、AI分析によって見出された強い「相関関係」ではあるものの、必ずしも直接的な「因果関係」を意味するわけではありません。「実証実験を行い、『5%社員』以外でも効果を出した」との前書きはあるものの、「この習慣を実践すれば、誰もがトップ5%の成果を出せる」と考えるのは早計かもしれません。
2つ目は、各習慣をデザインし自身に最適化することです。
例えば、【「5%社員」の85%が「挑戦」を「実験」と捉える】という習慣は、業種や職種によっては許容されるリスクの範囲が異なります。自社の状況を踏まえ、どのような「実験」なら許容され、そこから何を学び、どう次に繋げるかを具体的にデザインする必要があります。
このように、本書で提示された習慣の「本質」を理解し、自身の状況や組織の文化に合わせて「どのように応用・最適化するか」を考えるとよいでしょう。
まとめ
本書は、個人の生産性を高めたいビジネスパーソンはもちろんのこと、チームや組織全体のパフォーマンス向上を目指すリーダーにとっても、多くの気づきと具体的な行動指針を与えてくれる一冊です。
本書で紹介される習慣は、決して特別なものではなく、日々の意識と行動の変革によって誰でも身につけることができるものばかりです。本書をきっかけに、まずは一つでも新しい習慣を取り入れ、自身や組織のパフォーマンスを計測し、その効果を実感いただけると幸いです。
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- この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。
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