2025.09.03NEW

2025年のAI x スマートシティ戦略 — 技術と人をつなぐ都市づくりとコンサルタントの価値 —

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2025年のAI x スマートシティ戦略 — 技術と人をつなぐ都市づくりとコンサルタントの価値 —
インプットポイント
  • 2025年の最新のスマートシティに関する事情が分かる
  • スマートシティそのものと、スマートシティで何が解決できるのかを読者が理解できる
  • 日本の都市の現状の課題、スマートシティで活用される最新技術例などが分かる

2025年の都市経営を取り巻く環境は、新たな局面を迎えています。少子高齢化の加速、インフラの老朽化、エネルギー消費の増大、防災対応の高度化といった課題が山積する一方で、AIやIoT、デジタルツインといった技術革新が、都市の在り方そのものを大きく変えようとしています。こうした潮流の中、スマートシティは単なる未来像ではなく、現実の選択肢として各地で具体化が進み始めました。

一方で、データ連携の不足や導入コストの課題、地域ごとの技術格差やセキュリティリスクといった障壁も存在します。本稿では、日本国内での取り組みや最新技術の動向を交えつつ、スマートシティの実現に向けた戦略と課題、そしてその推進を支えるコンサルタントの役割と価値について幅広く解説します。大企業から中小企業、自治体の関係者まで、近未来に向けた「安全かつ効率的な都市づくり」の備えを構築するための視点と戦略をお届けします。

【目次】

はじめに:なぜ今「スマートシティ」なのか

1. 日本の都市が直面する現状と課題

1-1. 都市インフラと人口動態の二重の制約

1-2. データ連携を阻む様々な障壁

1-3. 技術活用における地域格差

1-4. セキュリティリスクの増大

2. スマートシティを支える最新技術活用

2-1. AIが変える都市運営

2-2. 住民サービスへのAI活用

2-3. IoTとデジタルツイン

2-4. 技術導入の障壁

3. 都市全体を守るセキュリティ基盤

3-1. ゼロトラストの必要性

3-2. 最新のリスク動向:日本のスマートシティが直面する脅威

4. DXコンサルタントが果たす役割と支援領域

5. まとめ:スマートシティは「未来の話」ではない

はじめに:なぜ今「スマートシティ」なのか

日本の都市は今、大きな転換期にあります。少子高齢化が加速し、地方の過疎化と大都市の過密化が同時進行する中で、交通渋滞やインフラ老朽化、エネルギー消費の増大、防災対応など、多面的な課題が顕在化しています。国は「デジタル田園都市国家構想」やGX(グリーントランスフォーメーション)を掲げ、ICTやAI、IoTといったデジタル技術の活用によって地域の持続可能性を高めることを目指しています。その最前線に位置するのが「スマートシティ」です。

本コラムでは、スマートシティの実現に必要な最新技術の活用、都市運営を支えるセキュリティ基盤の構築、そしてその実装を担うコンサルタントの役割を掘り下げます。大企業から中小企業の経営層、IT部門の責任者、地方自治体の企画部門など、都市や地域のデジタル化に関心を持つ方々に向け、近未来に備えた持続可能で安全かつ効率的な都市づくりのための最新視点と戦略をお届けします。スマートシティ構想はもはや未来の理想像ではなく、すでに実装段階に入った現実であり、その推進においてコンサルタントが果たす戦略的価値をご理解いただけるはずです。

1. 日本の都市が直面する現状と課題

1-1. 都市インフラと人口動態の二重の制約

日本の都市課題は、物理的なインフラの老朽化と人口構造の変化が複雑に絡み合っています。高度経済成長期に整備された道路、橋梁、水道管、送電網などは耐用年数を迎えつつあり、更新コストは年々増加。一方で、人口減少により税収基盤が縮小し、従来のような集中的インフラ投資が難しくなっています。

総務省統計局および国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計(2023年公表)によれば、2040年には全国の市区町村の約50%が人口1万人未満になると見込まれています。(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」2023年推計)。

こうした状況では、従来型の「広く一律にサービスを提供するモデル」では様々なサービスの維持が困難となります。地域ごとに異なる課題に応じた柔軟な施策が求められ、その基盤としてICTの活用が不可欠となります。

1-2. データ連携を阻む様々な障壁

スマートシティの実現には、交通、エネルギー、防災、医療、行政といった多様な分野間でのデータ連携が欠かせません。しかし現状、日本では省庁間、自治体間、さらには民間企業間でのデータ共有は限定的です。その背景には、システム仕様の違いに加え、契約条件の違いが大きな壁となっています。

例えば、ベンダーとの契約で「特定用途のみ利用可」「目的外利用禁止」といった条項が設定されている場合、別の自治体や他事業者へのデータ提供ができません。また、知的財産権の帰属や個人情報保護義務、セキュリティ要件が異なることで、共有のために追加契約や費用が発生するケースも少なくありません。結果として、横断的なデータ利活用は進まず、住民サービスの高度化や災害時の情報連携に遅れを生じさせているのです。

1-3. 技術活用における地域格差

大都市では民間企業や大学と連携した先進的プロジェクトが進んでいますが、中小都市や農山村地域では、そもそも技術導入のための人材や予算が不足しています。加えて、地域特性に応じたサービス設計が難しいことや、既存システムの老朽化による互換性の問題も障壁となっています。この地域格差が放置されると、都市間の生活品質や経済活力の差が拡大し、さらなる人口流出を招く恐れがあります。持続可能なスマートシティ実現のためには、こうした地域格差を是正する施策が不可欠であり、国や自治体、民間事業者の協力による共同投資やノウハウ共有の仕組みづくりが求められます。

1-4. セキュリティリスクの増大

都市のあらゆる機能をデジタル化すれば、利便性は向上しますが、その分サイバー攻撃の対象も拡大します。交通信号制御や電力供給、上下水道の運転管理など、重要インフラが標的となる攻撃は、単なる情報漏洩ではなく、人命や経済活動そのものを脅かす事態を引き起こしかねません。

実際、国内でも2023年以降、複数の地方自治体がランサムウェアにより庁内システムを停止させられる事例が総務省や報道で確認されています(出典:総務省「地方公共団体における情報セキュリティインシデント事例集」2024年版)。

2. スマートシティを支える最新技術活用

2-1. AIが変える都市運営

AI(人工知能)は、すでに日本各地の都市運営で実用段階に入っています。特に、交通や防災分野で成果を上げており、従来の経験則や人手に依存した運営から、リアルタイムデータに基づく効率的な意思決定へと移行が進んでいます。

福岡市東区アイランドシティでは、AI(人工知能)を導入したオンデマンドバス「のるーと」が既に実運用されています。利用者がアプリまたは電話で「乗車希望情報」を予約すると、AIが複数の乗客の要望を満たすように配車や運行ルートを計算、渋滞する場所や時間などを学習し日時によってルートを修正するなど、最も効率的なルートで利用者を乗降させながら運行することが可能となっています。

こうした事例は、AIがすでに都市運営の重要な基盤として機能しており、全国各地での展開が期待されることを示しています。

2-2. 住民サービスへのAI活用

住民問い合わせ対応にチャットボットを導入する自治体は増えています。AIチャットボットは24時間365日稼働し、手続き案内や災害情報の提供を自動化。人員不足の解消や窓口混雑緩和に寄与しています。また、医療現場でもAIの活用が進み、地域の健診データをもとに生活習慣病のリスクを事前に見極め、早期からの予防や指導に役立てられています。

2-3. IoTとデジタルツイン

IoT(モノのインターネット)は、都市のあらゆる場所に設置されたセンサーからリアルタイムデータを収集、道路の混雑状況・河川水位・電力消費量などが常時モニタリングされ、そのデータは「デジタルツイン」と呼ばれる仮想都市モデルに反映されます。デジタルツインは現実世界を精密に再現することで、災害時の避難シミュレーションや都市再開発計画の検証に利用できます。

2-4. 技術導入の障壁

最新技術は魅力的ですが、導入には課題も存在します。最大の障壁は既存システムとの互換性です。古いインフラ設備や業務システムを新技術とつなぐには、データ形式の標準化や通信プロトコルの統一が必要です。さらに、技術導入に伴う様々な費用や人材確保の課題も避けられません。

3. 都市全体を守るセキュリティ基盤

3-1. ゼロトラストの必要性

スマートシティでは、行政システム、公共インフラ、民間サービスがネットワークを介して密接に連携します。従来の境界防御型セキュリティは「内部ネットワークは安全」という前提に立っていましたが、クラウド利用やリモートアクセスが多いこのような環境ではこの前提は成り立たなくなっています。

ゼロトラストは、この「内部=安全」という前提を完全に捨て、すべての通信・アクセスを逐一検証します。ユーザー認証と端末検証を多要素で行い、アプリケーションやデータへのアクセス権限も必要最小限に設定。さらに、セッション中の挙動を継続的にモニタリングし、異常があれば即時遮断します。

スマートシティのように様々なユーザーが同じ基盤を利用する環境では、この「常時検証型」のゼロトラストセキュリティモデルが不可欠です。こうした考え方を都市全体に取り入れることで、スマートシティは外部からの脅威だけでなく、内部からのリスクにも強い体制を築けます。

3-2. 最新のリスク動向:日本のスマートシティが直面する脅威

スマートシティは利便性と効率性を飛躍的に高める一方で、新たなリスクを生み出します。特に日本では以下の3つの傾向が顕著です。

① ランサムウェアによる自治体・インフラへの攻撃の深刻化

地方自治体へのランサムウェア攻撃は依然として増加傾向にあり、行政や交通・ライフラインといった社会基盤が標的にされるケースも増えています。

② IoT機器を狙ったスキャンや不正アクセスが急増中

警察庁の統計によると、IoT機器が悪用される脆弱性探索のためのアクセス(海外IPなどからのスキャン)が継続的に高水準で推移しています。1日で1IPアドレスに対して9,144件にも及ぶアクセスが検知されており、全体の増加傾向も顕著です。(出典:国立研究開発法人、情報通信研究機構NICTER観測レポート2024)

③ IoTボット感染が進行中、1日あたり平均2,600台に到達

2024年のNICTER観測データによれば、日本国内でIoT機器のボット感染ホスト数が1日あたり約730~11,500台と検知されており、その平均で毎日約2,600台の機器が、不正アクセスやサイバー攻撃に利用されている実態が明らかになっています(出典:NICTER観測レポート 2024)。

これらの事例は、スマートシティ導入が進む一方で攻撃対象も多様化・高度化している現実を象徴しており、ゼロトラストやAIを活用した異常検知といった防御戦略が、都市のレジリエンス強化には非常に不可欠です。

4. DXコンサルタントが果たす役割と支援領域

スマートシティの推進は、単なる技術導入だけでは成し遂げられません。都市運営の方向性や利害関係者の調整、セキュリティ対策、持続可能な仕組みの設計といった多面的なマネジメントが不可欠です。さらに、急速に進化するデジタル技術に対応できる専門性と柔軟性を備えた支援が求められます。日々新しい技術やサービスが登場するなかで、真に価値あるものを見極め、現場に適合させる判断力が欠かせません。また、導入後の変化にも即応できる持続的な支援体制も欠かせません。

都市の課題に応じた戦略立案や、最新技術の効果的な導入と現場への統合、さらに堅牢なセキュリティと運用体制の構築は、スマートシティ推進における基盤となる取り組みです。これに加えて、新たな仕組みを定着させるための人材育成や、行政・住民サービスを長期的に持続させるための伴走的な支援も不可欠となります。

このように、コンサルタントは単なる導入時に必要な外部専門家/アドバイザーではなく、急速な技術革新と社会変化に対応しながら、都市が将来にわたり安全かつ効率的に成長し続けるための長期的/戦略的パートナーとして、成長をけん引する役割を担います。

5. まとめ:スマートシティは「未来の話」ではない

スマートシティは、もはや遠い未来の構想ではなく、各地で実装が始まっている現実です。都市課題の解決、経済活力の維持、住民生活の向上というゴールに向け、AIやIoT、ゼロトラストといった技術は重要な役割を果たします。しかし、技術だけでは十分ではなく、利害関係者を巻き込み、長期的な視点で都市運営をデザインする戦略が不可欠です。

DXコンサルタントは、この変革を推進する舵取り役として、都市の現状分析から技術導入、セキュリティ確保、運用体制構築までを包括的に支援できます。スマートシティの成否は、技術力と同時に、こうした総合マネジメント能力にかかっています。

都市の未来を描くことは、私たちの生活の未来を描くことでもあります。今こそ、持続可能で安全なスマートシティの実現に向けた一歩を踏み出す時なのかもしれません。

マガジン編集部
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この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。

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