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2025.12.24NEW

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サイト内検索のAI活用:CX向上への新たなアプローチ

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サイト内検索のAI活用:CX向上への新たなアプローチ
インプットポイント
  • 従来のキーワード検索の課題とAI搭載サイト内検索ツールによる解決策
  • セマンティック検索と辞書自動生成による検索体験の向上
  • ユーザーとサイト運用者の両面から見た導入効果

Webサイトにおけるサイト内検索機能は、ユーザーが求める情報に迅速にアクセスするための重要な導線であり、CX(顧客体験)を大きく左右します。従来のキーワード検索(全文検索)は、ユーザーが入力したキーワードとページ内の文字列を照合することで情報を提供し、多くのWebサイトで活用されてきました。

しかし、表記ゆれや同義語への対応、検索意図の理解不足など、いくつかの課題も存在していました。近年、AI技術を搭載したサイト内検索ツールが登場し、これらの課題を改善・解消しながら、CX改善により大きく貢献できるようになっています。

本記事では、AI搭載サイト内検索ツールの基本概念から主要機能、導入効果まで、体系的に解説します。

1章:サイト内検索の概要

サイト内検索は、Webサイトにおけるユーザー体験の質を左右する重要な機能の1つです。本章では、サイト内検索がCXに与える影響、基本的な仕組み、そして従来のキーワード検索が抱える課題について解説します。

1-1:サイト内検索の効能(CXへの貢献)

サイト内検索は、ユーザーが膨大なコンテンツの中から目的の情報に素早くたどり着くための重要な機能です。適切に機能する検索ツールは、以下のような形でCX向上に貢献します。

情報アクセスの効率化により、ユーザーは複数のページを巡回することなく、直接目的の情報にアクセスできます。特に、商品数が多いECサイトや、コンテンツが豊富な企業サイトにおいて、検索機能は不可欠な導線となっています。

この効率的な情報アクセスは、具体的には以下のようなビジネス効果をもたらします。まず、回遊率の向上/離脱率の低減が実現します。ユーザーが求める情報を見つけやすくなることで、サイト内の回遊率が向上し、情報が見つけられずにサイトから離脱してしまうケースを防ぐことができます。また、コンバージョン率の向上も期待できます。購買意欲の高いユーザーが検索機能を活用して目的の商品やサービスに到達することで、購入や問い合わせといったコンバージョンにつながりやすくなります。

ユーザーニーズの可視化という副次的な効果も見逃せません。検索キーワードのログを分析することで、ユーザーが何を求めているのか、どのようなコンテンツが不足しているのかを把握でき、サイト改善やコンテンツ戦略の立案に活用できます。

1-2:サイト内検索の仕組み

従来のサイト内検索は主に、「キーワード検索(全文検索)」という検索方式を採用しています。
キーワード検索は、基本的に以下のような仕組みで動作しています。

はじめに、対象サイトの「インデックスの作成」が行われます。サイト内の全ページを巡回(クロール)し、テキストデータを抽出してデータベースに格納します。この際、どのページ/コンテンツに、どのような単語が含まれているかを記録(インデックス化)します。

その後、検索窓にユーザーが何かしらのキーワードを入力することで検索が実行されます。ユーザーが入力した検索キーワードを解析し、インデックスと照合します。入力された検索キーワードと一致する、または部分的に一致するページを抽出します。

検索結果の順位付けでは、抽出されたページに対して関連度を計算し、順位を決定します。一般的には、キーワードの出現頻度、出現位置(タイトル、見出し等)、ページの重要度などを基に算出されます。

結果の表示として、順位順にページのタイトル、概要、URLなどを一覧表示します。

この基本的な仕組みは長年にわたって活用されてきましたが、いくつかの制約や課題も存在しています。

1-3:従来のサイト内検索における課題

従来のキーワード検索は多くのサイトで有効に機能してきましたが、ユーザー視点とサイト管理者視点の両面から、いくつかの課題が指摘されています。

【サイト利用者の観点からの課題】

キーワード検索(全文検索)の最も基本的な特性は、入力された検索キーワード(文字列)に合致する情報のみを表示するという点です。

この仕組みから生じる根本的な課題として、ユーザーが認識している言葉の範囲内でしか検索できないという制約があります。ユーザーが入力するキーワードは、ユーザー自身が既に知っている言葉に限定されます。そのため、ユーザーが認識していない関連情報や、別の表現で記載された情報を発見することが困難です。

また、文字列の一致のみを基準とするため、以下のような課題も生じます。

表記ゆれへの対応不足が頻繁に発生する問題です。「スマートフォン」と「スマホ」、「コンピューター」と「コンピュータ」など、同じ意味でも表記が異なる場合、入力した文字列と完全に一致しないため、適切な結果が得られません。

同義語・類義語の認識不足も同様の課題です。「携帯電話」と「モバイルフォン」、「購入」と「買う」など、意味が同じまたは近い言葉でも、文字列として異なるため、検索結果に漏れが生じます。

誤字脱字への対応も課題の一つです。ユーザーが入力ミスをした場合、入力された文字列と一致するページがないため、「該当なし」となってしまい、ユーザーは再入力を強いられます。

【サイト管理者の観点からの課題】

辞書メンテナンスの負荷が大きな課題です。従来の検索ツールでは、表記ゆれや同義語への対策として辞書を作成します。これは、よくある表記ゆれ(「スマートフォン」と「スマホ」)や同義語(「購入」と「買う」)を整理し、ユーザーがどちらの言葉で検索しても適切な結果が得られるようにするためです。しかし、この辞書の作成・管理は手動で行う必要があり、新しい商品名や用語が増えるたびに更新が必要となるため、継続的かつ膨大な労力を要します。

検索精度のチューニング作業も煩雑です。検索結果の質を高めるため、特定のキーワードに対して表示すべきページの順位調整(重み付け)を行います。例えば、「iPhone」と検索された場合に、最新モデルのページを上位に表示したり、人気商品を優先的に表示したりする設定が必要です。これらの調整は手動で行う必要があり、運用コストが増大します。

デッドリンク対策も継続的な課題です。Webサイトの運用において、ページの削除や移動は頻繁に発生します。検索結果にアクセスできないページ(デッドリンク)が表示されると、ユーザー体験を損なうため、定期的に検索ログを確認し、デッドリンクを手動で特定・修正する必要があります。

検索ログの分析と活用の難しさもあります。ユーザーがどのようなキーワードで検索しているかを把握することで、サイト改善やコンテンツ戦略の立案に活用できます。しかし、検索キーワードのログは蓄積されるものの、これを効果的に分析し、具体的なアクションに結びつけるには、専門的な知識と時間が必要です。

これらの課題に対し、AI技術を搭載したサイト内検索ツールは新たなアプローチで解決を図っています。次章では、AI搭載サイト内検索ツールの具体的な機能と特徴について詳しく見ていきます。

2章:AI搭載サイト内検索ツールの概要

前章で見たように、従来のキーワード検索には様々な課題が存在していました。本章では、AI技術を搭載したサイト内検索ツールが、これらの課題をどのように解決し、検索体験を向上させるのかについて解説します。

2-1:検索機能の高度化

AI搭載サイト内検索ツールの最も大きな特徴は、セマンティック検索と呼ばれる技術の導入です。

【セマンティック検索の登場】

セマンティック検索とは、検索キーワードの意味(セマンティクス)を理解して検索を行う技術です。従来のキーワード検索が文字列の一致のみを判定していたのに対し、セマンティック検索では、自然言語処理技術を活用して、単語や文章の意味を解析します。

具体的には、AIが膨大な文章データから学習することで、「どの言葉とどの言葉が意味的に近いか」を理解します。例えば、「スマートフォン」「スマホ」「携帯電話」「モバイル端末」といった言葉は、同じような文脈で使われることが多いため、AIはこれらを「意味が近い言葉」として認識します。検索時には、ユーザーが入力したキーワードと、サイト内のコンテンツを比較し、文字列が一致していなくても、意味的に関連性が高いコンテンツを見つけ出すことができます。

この技術により、ユーザーが入力したキーワードと完全に一致しない表現でも、意味的に関連するコンテンツを検索結果として提示できるようになります。例えば、「スマホ」と検索した場合、「スマートフォン」「携帯電話」「モバイル端末」といった関連する言葉で記載されたページも、辞書を事前に登録することなく自動的に検索結果に含まれます。

【セマンティック検索とキーワード検索の比較】

セマンティック検索とキーワード検索は、それぞれ異なる強みを持っています。

キーワード検索(全文検索)が適している場合:ユーザー自身が欲しい情報が明確かつ具体的に決まっており、かつその正確な名称・用語を知っている場合に適しています。

  • 特定の型番や固有名詞を探す場合(「iPhone 15 Pro」など)
  • 正確な用語や専門用語で検索する場合
  • 明確に定義された文字列で検索したい場合

例えば、「頭痛 治し方」と検索した場合、これらのキーワードが含まれるページが表示されます。

検索結果ページ例①:「頭痛の治し方を徹底解説」

検索結果ページ例②:「すぐに試せる頭痛の治し方5選」

セマンティック検索が適している場合:ユーザー自身が欲しい情報が定まっていない/曖昧な場合や、明確なニーズはあるが正確な用語を知らない場合に適しています。

  • 概念や意図を持った検索をする場合
  • 同義語や類義語での検索が想定される場合
  • ユーザーが正確な用語を知らない可能性がある場合
  • より幅広い関連情報を提示したい場合

例えば、同じく「頭痛 治し方」と検索した場合、セマンティック検索では検索意図(両面頭痛を何とかしたい)を深く理解し、即時的な対処法に限らず、原因や予防といった多様な情報を提示できます。

検索結果ページ例①:対処法関連:「偏頭痛を和らげる3つの方法」「痛みに効くツボ押しガイド」

検索結果ページ例②:原因・予防関連:「頭痛の主な原因とは」「ストレスが原因の頭痛対策」

予てから、Web検索では、キーワード検索とセマンティック検索の両方を組み合わせることで、それぞれの長所を活かした検索結果を提供しており、サイト内検索ツールにおいても同様の体験を提供するツールが増えています。

2-2:検索精度(チューニング)の高度化

AI技術は、検索精度の向上においても大きな役割を果たします。

【AIによる辞書の自動生成機能】

従来、表記ゆれや同義語への対応には、手動での辞書作成が必要でした。AI搭載の検索ツールでは、サイト内のコンテンツや検索ログを分析し、自動的に表記ゆれや同義語の関係を学習します。

例えば、「スマートフォン」と「スマホ」が同一のページで使用されている頻度や、両方の検索キーワードで同じページがクリックされている傾向などから、これらが同義であることをAIが自動的に判断します。これにより、管理者が手動で辞書を作成・メンテナンスする負荷が大幅に軽減されます。

【検索ログの分析・自動最適化機能】

AI搭載の検索ツールは、ユーザーの検索行動を継続的に学習し、検索結果を自動的に最適化します。具体的には、以下のような情報を分析します。

  • どのキーワードでどのページがクリックされているか
  • どの検索結果がコンバージョンにつながっているか
  • どのページで離脱率が高いか

これらのデータを基に、AIは検索結果の順位を動的に調整し、ユーザーにとってより有益な、ユーザーニーズの高い情報を上位に、ユーザーニーズとの関連性が低い情報は下位に表示するよう学習します。従来は手動で行っていた重み付けやチューニング作業が、自動化されることで、運用コストの削減と検索精度の継続的な向上が実現します。

2-3:検索結果表示の高度化

AI技術は、検索結果画面における情報提供の閲覧性も向上させています。

【AIによる要約機能】

一部のAI搭載サイト内検索ツールでは、検索結果として表示されるページの内容を、AIが自動的に要約して表示する機能を持つものもあります。この機能が実装されている場合、ユーザーは各ページを開かなくても、検索結果一覧の段階で各ページの要点を把握できます。これにより、目的の情報により速くアクセスでき、検索体験が大きく向上します。

特に、長文のコンテンツや技術文書が多いサイトでは、この要約機能がユーザーの情報探索を効率化する重要な役割を果たします。

また、検索キーワードに関連する部分を重点的に要約することで、ユーザーが求める情報がそのページに含まれているかを素早く判断できるようになります。

2章では、AI搭載サイト内検索ツールの主要な機能について解説しました。次章では、これらの機能がもたらす具体的な効用について見ていきます。

3章:AI搭載サイト内検索ツールがもたらす効用

前章では、AI搭載サイト内検索ツールの主要な機能について解説しました。本章では、これらの機能が実際にどのような効用をもたらすのか、ユーザーとサイト運用の両面から見ていきます。

3-1:ユーザーへの効用

AI搭載サイト内検索ツールは、ユーザーの検索体験を大きく向上させます。

適切な検索キーワードを知らない場合でも、ユーザーニーズに応じた検索結果が得られることが最も重要な効用です。従来のキーワード検索では、ユーザーが正確な用語を知っている必要がありましたが、セマンティック検索により、意味的に関連する情報が自動的に提示されます。例えば、「アカウント削除」と検索しても、サイト内で「退会手続き」という用語が使われている場合、適切なページにたどり着けるようになります。

検索意図に応じた多様な情報の提示も重要な効用です。前章で例示した「頭痛 治し方」という検索に対し、直接的な対処法だけでなく、原因や予防に関する情報も提示されることで、ユーザーは自身のニーズに最も合った情報を選択できます。これにより、情報探索の効率が大幅に向上します。

表記ゆれや誤字への自動対応により、ユーザーは再入力の手間が省けます。従来は「検索結果が見つかりませんでした」と表示されていた場合でも、AIが意図を理解して適切な結果を提示するため、ストレスの少ない検索体験が実現します。

また、ツールによっては検索結果の要約表示機能を持つものもあります。この機能により、ユーザーは検索結果に表示される各ページの要約を見ることで、ページを開かなくても内容の概要を把握できます。これにより、自分のニーズに合ったページを素早く見つけられ、不要なページを開く手間が省け、サイト内での情報探索がスムーズになります。

3-2:サイト運用への効用

AI搭載サイト内検索ツールは、サイト運用の効率化にも大きく貢献します。

運用コストの削減が最も直接的な効用です。従来は手動で行っていた辞書のメンテナンス、検索結果のチューニング、デッドリンク対策などが自動化されることで、サイト管理者の作業負荷が大幅に軽減されます。特に、大規模なサイトや頻繁にコンテンツが更新されるサイトでは、この効果が顕著に現れます。

検索ログの自動分析によるサイト改善の効率化も重要な効用です。AIが検索行動を分析し、ユーザーニーズの高い情報と低い情報を自動的に判別することで、どのコンテンツを強化すべきか、どのページを改善すべきかの示唆が得られます。これにより、データに基づいた効果的なサイト改善が可能になります。

コンテンツの回遊性向上も期待できます。セマンティック検索により、ユーザーは自身が認識していなかった関連情報にもアクセスしやすくなります。これにより、サイト内での回遊率が向上し、ユーザーのエンゲージメントが高まります。回遊率の向上は、離脱率の低減やコンバージョン率の向上にもつながります。

継続的な検索精度の向上により、サイトの価値が持続的に高まります。AI搭載の検索ツールは、ユーザーの検索行動を学習し続けるため、時間の経過とともに検索精度が向上します。これは、一度設定したら終わりではなく、使えば使うほど改善されていくという、従来のツールにはない特徴です。

3章では、AI搭載サイト内検索ツールがもたらす具体的な効用について、ユーザーとサイト運用の両面から解説しました。次章では、これまでの内容を総括し、今後の展望について考察します。

4章:まとめと今後の展望

本記事では、AI搭載サイト内検索ツールの基本概念から主要機能、導入効果までを解説してきました。最終章では、これまでの内容を総括し、今後の展望について考察します。

従来のキーワード検索(全文検索)は、入力された検索キーワード(文字列)に合致する情報のみを表示するという特性から、表記ゆれや同義語への対応、ユーザーが認識していない関連情報の提示などに課題がありました。また、サイト管理者にとっても、辞書のメンテナンスや検索精度のチューニングなど、継続的な運用負荷が発生していました。

AI技術を搭載したサイト内検索ツールは、セマンティック検索により検索キーワードの意味を理解し、文字列が一致しなくても意味的に関連するコンテンツを提示できるようになりました。また、辞書の自動生成や検索ログの自動分析により、運用コストの削減と検索精度の継続的な向上が実現します。

実際の運用では、多くのAI搭載サイト内検索ツールが、キーワード検索とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド検索を採用しています。これは、正確な型番や固有名詞の検索にはキーワード検索の精度を活かし、意図や概念を含む検索にはセマンティック検索を活用することで、両方の長所を最大限に引き出すアプローチです。このハイブリッド検索により、幅広いユーザーニーズに対応できる柔軟性の高い検索体験が実現されています。

ユーザーにとっては、適切な検索キーワードを知らない場合でもニーズに応じた情報が得られ、検索意図に応じた多様な情報が提示されることで、情報探索の効率が大幅に向上します。サイト運用者にとっては、運用コストの削減、検索ログの自動分析によるサイト改善の効率化、コンテンツの回遊性向上などの効用が期待できます。

AI搭載サイト内検索ツールは、従来の課題を解決し、ユーザー体験とサイト運用の両面で大きな価値を提供します。今後、AI技術のさらなる進化により、検索精度の向上や新たな機能の追加が期待されます。CX改善を目指す企業にとって、AI搭載サイト内検索ツールの導入は、重要な選択肢の一つとなるでしょう。

Profile

窪田 聡史Senior Consultant
WEBプロダクションにてディレクターとしてサイトやオウンドメディア構築、WEBコンテンツ制作に従事。コンテンツの企画からリリースといった制作の全工程においてプロジェクトの進行管理で豊富な経験を積む。
2021年から株式会社ファーストデジタルにジョイン。

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