AI導入のデータ構造:非構造化×構造化を組み合わせて精度と運用を両立する考え方
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インプットポイント
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- 構造化/非構造化データを前提に、AIを役割分担すべき意義がわかる
- ディープラーニング(以下、DL)と従来の機械学習(以下、従来ML)がどのようなシチュエーションで有効かがわかる
- AI導入を円滑に進める上流設計のステップがわかる
生成AIの普及により、ビジネスにおけるAI活用も、単に生成AIを使うだけでなく、より広範な業務プロセスを効率化するために「どう設計するか」に着手する企業も増えているかと思います。
AI活用の要諦としては業務とデータの設計にあると考えますが、特に重要になってくるのが、構造化データと非構造化データを分けて捉えることです。また、AIを自律的な置き換えではなく、人の判断を補完・強化するパートナーとして組み込むことが肝要です。
本稿では、非技術者にもわかるよう、非構造化×構造化を軸にした基本的な考え方を整理します。
- INDEX
構造化データと非構造化データとは
構造化データは、ExcelやDB(データベース)のように、行×列で整理できるデータであり、非構造化データは、そのままだとExcelやDBに落としにくいデータです。
①構造化データ(=表データ)
- 例:顧客情報(氏名、住所、電話番号)、売上情報(製品、価格、数量)等
②非構造化データ(=表形式にしにくいデータ)
- 例:自由記述テキスト、PDF、画像、音声、動画等
ポイントは、非構造化データは「読んで意味を取り出す工程」が必要になり、構造化は判断材料として扱いやすいということです。
この違いを前提にすると、「どこをAIに任せ、どこに人の判断を残すか」が設計しやすくなります。
役割分担の型:材料化(読解・解析)→意思決定支援(人の判断の手前まで)
AI導入が安定しやすいのは、業務の中でAIの役割を2つに分ける設計です。
①材料化(=読解・解析)
- 非構造化データを読み込み、判断に使える形に整えます。
- 例:分類(何の問い合わせか)、必要情報の抽出(契約番号/顧客番号)、信頼度(どれくらい確からしいか)等
②予測・意思決定支援(=人の判断の手前まで整える)
- 構造化データ(顧客/契約/履歴/規程/工程条件)と①の材料を使い、次に何をすべきかを整理します。
- 例:優先度付け、候補提示、要確認フラグ、処理の振り分け(どこに回すか)等
ポイントは「AIが全部決める」ではなく、人が最終判断しやすい状態を作ることです。
DLと従来MLは何に有効であるか
「DL(深層学習)や従来ML(機械学習)は、AIがデータを処理して予測や分類を行うための「学習済みモデルの作り方(手法)」を指します。データを入力すると、モデルが予測値(スコア)や分類結果を返し、それを業務の判断材料として使います。
本稿では、違いを定義ではなく「使いどころ」で整理します。
| 観点 | DL(深層学習) | 従来ML(機械学習) |
| 得意なデータ | 非構造化(文章・画像・音声など) | 構造化(数値・カテゴリなどの表データ) |
| 得意な役割 | 読解・解析(材料化:分類/抽出/信頼度) | 予測・意思決定支援(優先度/スコア/候補提示) |
| 現場での使い分け | 「何が書いてあるか/起きているか」を安定して取り出す | 「次にどう進めるか」を説明*しながら整える |
事例で解説:問い合わせ対応/製造品質向上
【事例1】問い合わせ対応(コールセンター/社内ヘルプデスク)
狙い:一次対応を速くしつつ、重要案件は確実に人へ回す。
- 材料化(DL):問い合わせ文(非構造)を読み取り、種別(請求/障害/解約など)/信頼度/緊急度・クレーム兆候 などを整理する。
- 意思決定支援(従来ML/ルール):契約状態/過去問い合わせ履歴/利用履歴などの表データ(構造)と材料を合わせ、優先度(至急/通常)/対応方針(自動回答/担当者対応/追加確認)/オペレータに回す条件(AI判定低信頼度、重要顧客、本人確認が必要 等)を整理する。
- 最終判断(人):AIの提案を踏まえて、実行可否と対応方針を決裁する。
【事例2】製造品質(外観検査+工程改善)
狙い:不良検知に加えて、原因特定と改善に繋げる。
- 材料化(DL):画像/動画を解析し、欠陥の有無/不良確率/欠陥種別/発生位置 等を整理する
- 意思決定支援(従来ML/ルール):工程条件の表データ(温度、圧力、速度、材料ロット、設備ID、時間帯 等)と材料を合わせ、不良が増えやすい条件(要因候補)/打ち手候補(追加検査・条件変更・設備点検 等)+優先度を整理する。
- 最終判断(人):AIの分析結果を踏まえて、製造ラインを止めるかや追加検査実施するか等を決裁する。
AI導入を円滑に進める上流ステップ
非技術者であっても、以下の手順を押さえておくことで、関係部門やベンダーなどのステークホルダーと認識を揃えやすくなり、AI導入を円滑に進めやすくなります。
1. To-Be業務フローを描く
AI導入後のあるべき姿を可視化し、「どこを自動化し」「どこに人の判断を残すか」を洗い出します。現状とのギャップもここで整理します。
2.データを棚卸し(構造化/非構造化に分類)
利用可能なデータをリストアップし、表データ(構造化)と文書・画像・音声(非構造化)に分けます。この整理をしておくと、どの部分にDL/従来MLを使うべきかの見立てが立てやすくなります。
3.AIの役割と人の役割を設計
業務フローの各ステップで「ここはAIに任せられるか、それとも人の判断が必要か」を決めます。典型は AIが分類・抽出→人が最終承認するような仕組みです。AIと人の協働プロセスを先に設計するのが肝です。
4. PoC→効果検証→段階的に拡大
いきなり全面導入せず、限定範囲で精度や運用コストを確認します。小さく始めて課題を潰し、勝ち筋だけを横展開していくことで、安全に全社展開へ繋げられます。
まとめ
最近は自律型AI(エージェント)も登場し、業務を「自動で回す」選択肢も増えています。
ただ、現実の業務では 例外対応・説明責任・権限管理・品質担保 がボトルネックになりやすいので、まずは 「人が責任を持ち最終判断」を残した分業設計 から始めるのが堅実です。
AI導入の本質は、最新モデルを追うことではなく、業務とデータをどう設計するかです。
構造化×非構造化を分け、DLで材料化し、従来ML(やルール)で意思決定を支援し、最後は人が責任を持つ。
この設計ができると、AI活用は「点の導入」から「業務プロセス全体の効率化」へ進みやすくなります。
Profile

証券基幹システムの追加開発・保守を担い、「新規投資信託販売会社導入PJ」でサブリーダーとして要件定義から導入までを推進。その後、デジタルマーケティング領域のコンサルティングファームにて、製薬・飲料・金融・サービスなど複数業界の マーケティング基盤構築や可視化プロジェクトをリード。
2025年から株式会社ファーストデジタルにジョイン。



