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2026.02.25NEW

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AIが拓くポストCookie時代のCRM:ゼロパーティデータで築く「裏切らない」ロイヤルティ

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AIが拓くポストCookie時代のCRM:ゼロパーティデータで築く「裏切らない」ロイヤルティ
インプットポイント
  • ゼロパーティデータ(ZPD)の定義と、1st/3rdパーティデータとの違いについて理解する
  • ゼロパーティデータの取得ルートについて理解する
  • B2CにおけるAI×ZPDの具体的活用事例を通じて、AI時代におけるZPDの重要性を理解する
  • 人間にしかできない「オーケストレーション」の役割について理解する

これまで本マガジンでは、顧客と長期的な信頼関係を築く「ロイヤルティマーケティング」をテーマに、さまざまな角度から考察を続けてきました。

基礎的な概念からNPSやRFM分析といった具体的な指標、そしてコンテンツマーケティングの在り方まで、これまでの記事を以下に整理しました。本稿と併せてご覧いただくことで、時代とともに進化するロイヤルティの全体像をより深くご理解いただけるはずです。

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前回の記事では、AIというエンジンがロイヤルティマーケティングをどう進化させるか、その全体像を展望しました。AIの実装が加速するなかで、次に私たちが向き合うべき不可避な課題は「AIという知性に、どのような魂(データ)を吹き込むか」という点に集約されます。

デジタルマーケティングの世界では今、大きな地殻変動が起きています。長らく主流だった「クッキー(Cookie)ベースの追跡」が、プライバシー保護の観点から終焉を迎える「ポストCookie時代」に突入しました。顧客の背後をそっと追いかけるような「トラッキング(追跡)」の手法は、もはや効率が悪いだけでなく、ブランドに対する不信感を植え付けるリスクさえ孕んでいます。 こうした状況下で、今、世界中のトップマーケターが注目しているのが「ゼロパーティデータ」です。 これは、顧客が自らの意思で「あなたになら教えてもいい」と宣言して差し出したデータです。今回は、このゼロパーティデータをAIでどう「感動体験」に変換し、マインドロイヤルティ(信頼と愛着)を築くべきかを深掘りします。

「ゼロパーティデータ」の正体 ― 誰が、どこで、どう取るのか?

「ゼロパーティデータ(ZPD)」とは、一言で言えば「顧客の宣言」です。

これまでのデータ活用において主流だった1stパーティデータ(1st PD)や3rdパーティデータ(3rd PD) と何が違うのか、その境界線を明確にしましょう。

1.3つのデータの違い:推測・追跡・宣言

これらの違いを、この記事の鍵となる「ゼロパーティデータ」を基準に整理すると、以下のようになります。

ご覧の通り、ゼロパーティデータは他のデータと比べて「透明性」と「時間軸(未来の意思)」において圧倒的な優位性を持っています。

2.ゼロパーティデータは「誰が、どこで」取得するのか?

ゼロパーティデータの取得主体と方法は、主に以下の2つのパターンに分類されます。

パターンA:【ブランド直接型(CRMの王道)】

  • 主体: 事業主(自社)
  • やり方: 自社サイト、アプリ、公式LINE内での「クイズ」「診断」「アンケート」。
  • イメージ: 「私の肌質は乾燥肌です」「キャンプ初心者です」と自ら入力する情報。
  • 狙い: 顧客の個別の悩みに即した、パーソナルな提案(コンテンツやレコメンド)を行うため。

パターンB:【プラットフォーム媒介型(エコシステム活用)】

  • 主体: 調査会社やポイ活アプリ等のプラットフォーム
  • やり方: ユーザーがインセンティブ(ポイント等)を目的に、自分の外部データ(他社の購入メール履歴等)を自らの意思で接続・提供する。
  • イメージ: 「より良い還元を受けるために、私の他社での買い物情報をこのプラットフォームに提供します」という能動的な連携。
  • 狙い: 自社サイト内だけの行動(1stPD)では見えない、生活者としての「全体像」を把握するため。

ここで重要なのは、パターンBであっても、それが3rdPDとは根本的に異なるという点です。3rdPDが本人の知らない裏側で取引されるデータであるのに対し、媒介型のゼロパーティデータは、顧客が「自分のデータを価値に変えたい」という明確な意志(オプトイン)を持って提供したデータです。この「能動的な合意」こそが、データの質を劇的に変えるのです。

なぜゼロパーティデータには「AI」が必要なのか?

ゼロパーティデータは顧客からの「贈り物」ですが、その多くは「生の言葉」や「膨大な履歴の束」という、コンピュータが扱いにくい形で届きます。ここでAIという通訳・エンジンが必要になります。

1.「聞き上手な接客」による収集

無機質なアンケートフォームでは、顧客は本音を語りません。生成AIを活用したチャットボットが、雑談を交えながら「最近の悩み」や「理想のライフスタイル」を引き出すことで、データ収集そのものが楽しいブランド体験になります。

2.非構造化データのインサイト化

「最近、なんとなく疲れが取れなくて…」という曖昧な言葉や、連携された膨大な購入メール履歴(非構造化データ)を、AIが自然言語処理で解析します。AIはこれを「この顧客にはウェルビーイングへの関心が高まっている」というマーケティング可能なデータに翻訳します。

3.「即時還元」のループ

ゼロパーティデータは「信頼の預け入れ」です。データを渡した瞬間に「教えてくれてありがとう、それならこれが最適です!」とAIが即座に価値を返さなければ、顧客は二度とデータを渡してくれません。このリアルタイムなレスポンスはAIにしかできない領域です。

B2CにおけるAI×ゼロパーティデータの活用最前線

具体的な活用イメージを、3つの事例で深掘りします。

事例1:アパレル ― 「クローゼットの悩み」の解決

閲覧履歴(1stPD)に、AI診断で得た「手持ちの服の色」や「体型の悩み(ゼロパーティデータ)」を掛け合わせます。AIが「お手持ちの黒のパンツに合う、1万円以下で体型カバーができる新作」を提案することで、顧客は「自分専用のスタイリストがいる」というマインドロイヤルティを強めます。

事例2:コスメ ― 「伴走者」としてのパーソナルケア

「最近の睡眠時間」や「ストレスの有無」をAIが定期的にヒアリング。それに基づき、AIがその日の肌状態に合わせたお手入れ動画を生成したり、次に買うべき製品をリマインドしたりします。単なる物売りを超えた、個人の人生に寄り添う「伴走者」としての関係性を築きます。

事例3:データ連携 ― 「生活圏全体」の理解

調査会社のプラットフォーム経由で、他社での購入履歴を連携。AIが解析し、「自社ではビールを、他社では健康食品を大量買いしている」という事実から、「平日は節制、週末はご褒美」という顧客の生活リズムを読み解き、最適なタイミングでアプローチします。「勝手に追跡されたデータ」ではなく「自ら繋いだデータ」だからこそ、顧客はこの深い提案を「おもてなし」と感じるのです。

マーケターの役割変容 ― 分析から「オーケストレーション」へ

AIが「聴く」と「出す」を担うとき、マーケターの役割は**「オーケストレーション(指揮)」**へとシフトします。なぜ、今このスキルが求められるのでしょうか。

1.ブランドの人格(パーソナリティ)の設計

AIは回答を生成できますが、「意志」は持ちません。ブランドが顧客にとって「親しい友人」なのか「厳格なプロ」なのか。その人格を定義し、AIの振る舞いをオーケストレーションしなければ、コミュニケーションは機械的で魅力のないものになってしまいます。

2.倫理と信頼の監視(ガーディアン)

AIは効率を追求するあまり、時に「踏み込みすぎた」提案をしてしまうリスクがあります。データの使い方が顧客を不快にさせていないか、プライバシーの境界線を守れているか。顧客との信頼関係を維持するための「倫理的なブレーキ」は、人間にしか踏めません。

3.「非効率な熱量」の注入

AIが得意なのは「確率的な最適化」です。しかし、ロイヤルティを決定づけるのは、時に「非効率な驚き」です。あえてAIの推薦を外し、ブランドの思想を象徴するストーリーを届けたり、サプライズのギフトを設計したりする。この「熱量」のコントロールこそが、オーケストレーターたるマーケターの真骨頂です。

分析という「作業」をAIに委ねることで、マーケターはようやく、こうした「顧客の心を動かす設計」という本来の役割に集中できるようになるのです。

結びに:ターゲットではなく「パートナー」として

これまでのマーケティングは、顧客を「ターゲット(標的)」として捉え、いかに足跡を追って効率よく網にかけるかを競ってきました。しかし、ゼロパーティデータとAIが創り出す未来は違います。

顧客は今、自分を監視するブランドではなく、自分を深く理解し、生活を豊かにしてくれる「パートナー」を求めています。AIを「顧客を追跡するための目」として使うのではなく、顧客の声を深く聴くための「耳」として使うこと。

ゼロパーティデータという「顧客の意思」に、AIという「知性」と、マーケターという「意志」を掛け合わせる。それこそが、2026年以降のCRMにおける「裏切らないロイヤルティ」を築く唯一の道となります。

Profile

田中 瑞樹Senior Consultant
一橋大学卒業後、2000年P&Gファーイースト・インクに入社。アシスタントブランドマネージャーとして新商品のコンセプト開発に従事。
2002年ダイレクトマーケティングに強みを持つ広告会社の株式会社大広に入社。営業を2年、マーケティングリサーチャー・ストラテジープランナー2年の職種経験を経て、2006年より大⼿健康⾷品通販クライアントの専属デジタルチームのリーダーに着任。以降、約11年間チームを牽引しつつ、「新規顧客獲得販促活」から「顧客育成のCRM活用」まで幅広い範囲のデジタルマーケティング活動に関して、戦略策定・メディアプラン作成・施策開発等に従事。
2017年から株式会社ファーストデジタルにジョイン。

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