MVVとは?~ミッション・ビジョン・バリューが経営や事業に与える影響~

- インプットポイント
-
- MVVの重要性とそれぞれの違いが分かる
- MVVのメリット・デメリットや策提時に気を付けるべきポイントが分かる
企業経営において、ミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVVと称する)は組織の存在意義、目指す未来、大切にする価値観を表す重要な指針です。
しかし、MVVがどれほど重要なものなのか深く理解せずに定めている場合も少なくないかと思います。
MVVは単なるお飾りや美辞麗句ではなく、意思決定の指針となり、組織の一体感を醸成し、ブランドイメージを構築する上で欠かせない要素です。
そこで本記事では、MVVの重要性について、事例を示しつつ紹介していきたいと思います。
~MVVの時代的背景~
企業経営における理念体系の重要性は、時代と共に大きく変化してきました。かつての1950-60年代は「作れば売れる」プロダクト中心主義の時代であり、企業の目的は明確に「利益の最大化」でした。企業理念はあっても創業者の個人的な信条という色彩が強く、体系的なMVVとして整理されることは稀でした。
一方、現代はAIやデジタル技術の急速な発展により、ビジネスモデルの寿命が短くなり、先行きの予測が困難なVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代を迎えています。このような環境下では、「何をするか」よりも「なぜ存在するか」というミッションや、「どこを目指すか」というビジョン、そして「どのように行動するか」というバリューが、変化の中での一貫性を保つ指針として重視されるようになりました。
MVVは現代企業にとって、単なる「飾り」ではなく、目まぐるしく変化する経営環境における羅針盤として、また多様なステークホルダーとの関係構築における共通言語として、その重要性が増しているのです。
【目次】
- 第1章:MVVとは?
- 第2章:MVVが経営戦略にもたらす価値
- 第3章:MVVの欠如がもたらす問題点
- 第4章:MVVの重要性を示す事例
- 第5章:MVVの効果的な策定・組織浸透方法
- 終章:まとめ
第1章:MVVとは?
MVVとは、ミッション(Mission)、ビジョン(Vision)、バリュー(Values)の頭文字を取った言葉で、企業経営の根幹を成す3つの要素を指します。それぞれの意味と関係性について、弊社MVVを例に解説します。
ミッション – 存在意義
ミッションとは、企業の存在意義や社会における役割を示すものです。「何のために会社が存在するのか、なぜこの事業を行っているのか」という根本的な問いに対する答えとなります。
弊社のミッションは以下の通りです。
- 日本の国際競争力を再び世界トップレベルに引きあげる
- 若い世代が経済の最前線をリードできる環境をつくる
これはコンサルティングサービスの提供という単なる事業内容を超えて、コンサル対象となる各企業の事業改善およびコンサル提供者となる自社社員の成長促進により、社会を活性化させるという社会的意義を示しています。
ビジョン – 目指す未来像
ビジョンは、企業が将来的に実現したい世界や達成したい姿を描いたものです。ミッションが「なぜ」を問うのに対し、ビジョンは「どこへ」向かうのか、目標を示します。 弊社のビジョンは以下の通りです。
- クライアントの利益を最大化するためのコンサルティングサービスを提供する
- 優秀な若手ビジネスパーソンを多数輩出する企業になる
これらは結果・成果にコミットメントし続ける姿勢と人財輩出企業になるべく前に進む姿勢を示しています。
バリュー – 大切にする価値観
バリューは、企業が大切にする価値観や行動原則を表します。日々の意思決定や行動の際に、社員が参照すべき規範となるものです。
弊社のバリューは以下の通りです。
- クライアントファースト
- 結果・成果に拘ったコンサルティングサービスの提供
- デジタル戦略領域での豊富な知見
- 完全成果主義で活性化された組織
これらの価値観は、サービス提供から社内文化の形成まで、あらゆる場面での判断基準となっています。
MVVの関係性と一貫性
ミッション、ビジョン、バリューの3要素は互いに密接に関連し、一貫性を持つことが重要です。
これら3つの関係を整理すると下記になります。
- ミッション:企業が「何のために存在するか」という根本的な存在意義
- ビジョン:企業が「どのような世界を目指すか」という理想像
- バリュー:ミッションとビジョンを実現するために「どのように行動すべきか」という行動規範
ミッションが企業の「存在理由」、バリューが「行動規範」、ビジョンが「目指す姿」と捉えると、MVVは企業の過去・現在・未来をつなぐ一貫した物語を形成します。
弊社においても、一貫したMVVのもとで、社員一人一人が高品質/クライアントファーストなコンサルティングサービスの提供を心掛けています。このように明確で一貫性のあるMVVがあるからこそ、従業員は自分の果たすべき役割を理解でき、クライアントも弊社の姿勢に共感し、安心して案件の舵取りをお任せいただけていると感じることができています。
第2章:MVVが経営戦略にもたらす価値
企業経営においてMVVは、単なる飾り文句ではなく、経営戦略の土台となるものです。MVVが明確に定義され、組織全体に浸透することで、企業はさまざまな価値を得ることができます。本章では、MVVがもたらす具体的な価値について解説します。
意思決定の指針
企業活動において、大小さまざまな意思決定が日々行われています。MVVは、そうした意思決定を行う際の明確な指針となります。特に複雑な状況や選択肢が多い場合、「私たちの企業の存在意義は何か」「私たちが目指す未来とは」「私たちが大切にしている価値観は何か」という問いに立ち返ることで、迷いなく判断を下すことができます。
例えば、新規事業への参入を検討する際、その事業がミッションの実現に貢献するか、ビジョンの達成に近づけるか、バリューに合致しているかを問うことで、参入の是非を判断することができます。MVVに合致しない事業機会は、魅力的に見えても長期的には企業の方向性を歪める可能性があります。
このように、MVVは日常的な業務判断から重要な戦略的意思決定まで、一貫した判断基準を提供し、企業活動の一貫性を保つ役割を果たしています。
組織の一体感を醸成
明確なMVVは、社員が共通の目標や価値観を持つことを促し、組織としての一体感を醸成します。社員一人ひとりが「なぜ私たちはこの仕事をしているのか」という存在意義を理解し、共有することは、モチベーションの向上と組織力の強化につながります。
特に企業規模が大きくなればなるほど、部門間の連携や共通認識の醸成は難しくなりがちです。しかし、明確なMVVが存在し、それが組織全体に浸透していれば、部門や役職を超えても同じ方向を見据えながら働くことができます。
また、MVVは新入社員の教育や人材採用においても重要な役割を果たします。企業のMVVに共感できる人材を採用し、MVVに基づいた教育を行うことで、企業文化の継承と強化が可能になります。
ブランドイメージ構築
MVVは、対外的なブランドイメージの構築においても重要な役割を果たします。消費者や取引先、投資家などのステークホルダーに対して、企業の存在意義や目指す方向性を明確に伝えることは、信頼関係の構築につながります。
特に現代では、消費者は単に商品やサービスだけでなく、企業の姿勢や価値観にも関心を持っています。企業のミッションやビジョン、バリューに共感できるかどうかが、購買決定に影響を与えることも少なくありません。 例えば、環境保護や社会貢献を重視するバリューを持つ企業は、同様の価値観を持つ消費者からの支持を集めやすくなります。このように、MVVはマーケティングコミュニケーションの基盤ともなり、一貫したブランドメッセージの発信を可能にします。
長期的視点の確保
企業経営においては、短期的な成果と長期的な成長のバランスを取ることが重要です。MVVは、短期的な利益追求に偏りがちな経営判断に対して、長期的な視点を提供します。
ビジョンは通常、5年、10年といった長期的な時間軸で設定されるものです。このビジョンの実現に向けた道筋を常に意識することで、目先の利益だけでなく将来の成長可能性を考慮した意思決定が可能になります。
また、時代や市場環境の変化によって戦略の修正が必要になることもありますが、MVVという不変の軸があることで、変化の中でも一貫性のある経営が可能になります。MVVは変化する環境の中での「北極星」のような役割を果たし、企業が進むべき方向性を示し続けるのです。
このように、MVVは短期的な成果と長期的なビジョンのバランスを取りながら、持続的な企業成長を実現するための重要な指針となります。
第3章:MVVの欠如がもたらす問題点
企業経営において、MVVが明確に定義されていない、あるいは形骸化している場合、様々な問題が生じることになります。本章では、MVVの欠如や不明確さがもたらす具体的な問題点について詳しく見ていきましょう。
方向性の不一致と意思決定の遅延
MVVが不明確な組織では、各部門や個人が異なる方向を向いて活動してしまうことがあります。共通の指針がないため、それぞれが「正しい」と考える方向に進み、結果として組織全体としての一貫性が失われます。
例えば、営業部門は売上最大化を最優先し、製品開発部門は技術的革新を重視し、財務部門はコスト削減を優先するといった状況が生じます。こうした方向性の不一致は、部門間の対立や摩擦を引き起こし、組織の効率を大きく低下させることになります。
また、重要な意思決定の場面においても、判断基準が不明確なため、決断に時間がかかったり、場当たり的な判断になりがちです。特に複数の選択肢がある場合、「何を基準に選ぶべきか」という根本的な問いに答えられないため、意思決定プロセスが長引き、ビジネスチャンスを逃してしまうことさえあります。
このように、MVVの欠如は組織の方向性の不一致と意思決定の遅延をもたらし、企業の競争力を弱める要因となります。
従業員エンゲージメントの低下
明確なMVVがない企業では、従業員が「何のために働いているのか」という根本的な問いに答えることが難しくなります。単に給与のために働くだけでなく、自分の仕事が社会や顧客にどのような価値をもたらしているのかを理解することは、従業員のモチベーションとエンゲージメントに大きく影響します。
特に現代の若い世代は、仕事の意義や自己成長の機会を重視する傾向があります。彼らにとって、企業のミッションやビジョンに共感できるかどうかは、就職先を選ぶ重要な基準の一つです。MVVが明確でない企業は、優秀な人材の獲得と定着に苦戦することになります。
また、組織内での役割や期待値が不明確になりがちなため、従業員は自分の貢献がどのように評価されるのかわからず、不安や不満を抱きやすくなります。このような状況は、従業員の創造性や積極性を阻害し、組織全体のパフォーマンスを低下させる原因となります。
顧客訴求力の弱さ
MVVが不明確な企業は、顧客に対して「なぜ私たちを選ぶべきか」という本質的な価値提案を明確に伝えることができません。製品やサービスの機能や価格だけでなく、その背後にある企業の理念や価値観が、顧客の選択に大きな影響を与える現代において、これは大きな競争上の不利になります。
特に類似した製品やサービスが多く存在する市場では、企業の個性や理念が差別化要因として重要です。MVVに基づいた一貫したブランドメッセージがないと、企業は「よくある一つの選択肢」として認識されるだけで、顧客の心に深く印象づけることができません。また、顧客とのコミュニケーションにおいても一貫性が失われ、マーケティングメッセージが場当たり的になりがちです。これは顧客の信頼を損ない、ブランドロイヤリティの構築を難しくします。
第4章 MVVの重要性を示す事例
本章では、実際のビジネス世界において、MVVが企業に大きく影響をもたらした事例を紹介しつつ、その重要性を考えます。
MVVが破綻した企業の行く末
米国_写真用品メーカー:技術革新とミッションの乖離
かつて世界最大の写真用品メーカーであった企業が、デジタルカメラの台頭という技術革新に対応できませんでした。デジタルカメラの基本技術を最初に開発したのはコダック自身でしたが、既存のフィルムビジネスを守るという価値観が社内に浸透していた結果、皮肉なことにデジタル化への本格的な移行が遅れました。この結果、2012年に破産申請に追い込まれ、写真産業の歴史に大きな転換点を残しました。
米国_メガバンク:バリューの形骸化
米国でも指折りのメガバンクでは、「顧客のニーズを第一に考える」というバリューを掲げていましたが、現実には厳しい販売目標と成果主義が優先され、2016年には顧客の許可なく200万以上の口座が不正に開設されていたことが発覚しました。外部に向けて掲げるバリューと内部で実際に評価される行動基準が乖離した典型例で、バリューが形骸化した結果、企業の信頼は大きく損なわれ、多額の罰金と顧客喪失という代償を払うことになりました。
MVVの見直しにより再建した企業
スターバックス:原点のミッションへの回帰
大手カフェチェーンであるスターバックスは、2008年の金融危機時、同社は急速な店舗拡大に伴い「コーヒー体験」という本来のミッションから逸脱し、効率化を優先するあまりコーヒーの香りさえ感じられない店舗運営に陥っていました。しかし、ハワード・シュルツがCEOに就任したことで、人々の日常に感動的なコーヒー体験を提供するという原点に立ち返ります。店舗を一時閉鎖してバリスタの再訓練を実施するという大胆な施策を取りつつ、顧客体験の質を高める取り組みを徹底し、再建に成功しました。
レゴ:本来のミッションへの回帰
玩具メーカーのレゴは、2000年代初頭に深刻な経営危機に陥りました。多角化戦略に走る中で「子どもの創造性を育む」という本来のミッションを見失い、アパレルなど関連性の薄い事業に手を広げた結果でした。新CEOのヨルゲンは、「Inspire and develop the builders of tomorrow(明日の創造者を触発し、育てる)」という明確なミッションに立ち返り、本業の玩具事業に集中。製品ラインを顧客志向で再構築したことで、見事に再生を果たしました。
第5章: MVVの効果的な策定・組織浸透方法
MVVの重要性は理解できても、実際にどのように策定し、組織全体に浸透させればよいのか悩む経営者や責任者は少なくありません。本章では、形骸化させないMVVの策定プロセスと効果的な組織浸透の方法について解説します。
MVV策定時のポイント
効果的なMVVを策定するためには、単なる美辞麗句の羅列ではなく、企業の本質を捉えたものにする必要があります。
まず第一に重要なのは、MVV策定のプロセスに経営トップが主体的に関わることです。MVVは企業経営の根幹に関わるものである為、経営者自身が自らの言葉で語れるものでなければなりません。
また、MVVの中でも特にビジョンにおいては、「測定可能性」と「実現可能性」のバランスが重要です。あまりに抽象的で測定困難なビジョンでは、進捗が見えず組織の士気が上がりません。かといって、短期的且つ具体的な数値目標のようなものではビジョンとしての本来の役割を果たせません。その様な内容はビジョンではなく、中期経営計画に含めるべきです。理想的なビジョンは、達成度を感じられる程度の具体性を持ちながらも、組織に挑戦と創造性を促すものでしょう
MVVを検討する際には、以下の3つの観点からの分析が有効です。
- 自社の歴史と強み:創業の経緯、これまでの成功体験、蓄積されたノウハウなど
- 現在の事業環境:市場動向、競合状況、社会的課題など
- 将来のあるべき姿:社会における自社の存在意義、実現したい未来像など
例えば、長年製造業で品質へのこだわりを強みとしてきた企業が、デジタル化の波を受けてソリューション提供へと事業転換を図る場合、「モノづくりで培った精緻さと信頼性を、デジタルソリューションにも反映する」といったミッションが考えられます。
MVVを組織に浸透させるための施策
どれほど素晴らしいMVVを策定しても、それが組織全体に浸透しなければ意味がありません。MVVの浸透には、様々なレベルでの継続的な取り組みが必要です。
最も基本的なのは、社内外への明示的なコミュニケーションです。HPやオフィス内での掲示、名刺への記載など、日常的に目にする機会を増やすことが大切です。
さらに踏み込んだ施策としては、MVVをテーマにしたワークショップやディスカッションの開催があります。何より重要なのは、経営層自身がMVVを体現し言及することです。ミッションと照ら合わせた形で重要な意志決定判断を下す等、自らMVVを判断基準として活用する姿勢を見せることで、組織全体への浸透が進みます。
人事制度との連動も効果的です。採用選考においてMVVへの共感度を評価項目に加えたり、社員評価においてMVVの体現度を考慮したりすることで、MVVを意識した行動が促進されます。
MVVを活かした事業展開のヒント
最後に、MVVを単なる飾り物にせず、実際の事業展開に活かすためのヒントを紹介します。
新規事業や新商品の開発においては、企画段階からMVVとの整合性を検証するプロセスを組み込むことが有効です。「この事業はミッションの実現にどう貢献するか」「このサービスはビジョン達成の一助となるか」といった問いを立て、MVVを判断基準とした事業選択を行います。
また、外部とのコミュニケーションにおいて、MVVを一貫した軸として活用することも有効です。広告やプロモーション、ソーシャルメディアでの発信など、あらゆるコミュニケーションにMVVを反映させることで、ブランドイメージの一貫性と差別化を図ることができます。
終章:まとめ
企業経営におけるMVVの重要性は、これまで見てきたとおり多岐にわたります。MVVは意思決定の指針となり、組織の一体感を醸成し、ブランドイメージを構築する基盤となります。
企業がこれからの時代を生き抜き、持続的な成長を遂げるためには、MVVを単なる掲げ札ではなく、経営の中核に据えることが重要です。
MVVを起点とした経営判断、人材育成、組織づくり、そして顧客体験の設計が、真の企業価値の創造と競争優位性の確立につながります。
本記事を通して、今一度、MVVについて考えてみる機会を提供出来れば幸いです。
弊社MVVはこちらから
https://www.firstdigital.co.jp/about
参考サイト:

- マガジン編集部
- この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。
Contact
ファーストデジタルの提供するサービスに関心をお持ちの場合には、ぜひ一度ご相談ください。
デジタルに精通したコンサルタントがビジネスの変革を支援します。
Recruit
ファーストデジタルは成長を続けており、やりがいのあるハイレベルなプロジェクトと
切磋琢磨できるチームメンバーがあなたのキャリアアップを加速させます。