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2026.10.21NEW

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AI活用と情報漏洩のリスク|生成AI時代に見直したい3つの入口

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AI活用と情報漏洩のリスク|生成AI時代に見直したい3つの入口
インプットポイント
  • 生成AIが社内外のシステムとつながって動くようになった今、情報漏洩がどこから起きるのかを、導入後の運用の視点で整理できる
  • 情報漏洩の3つの入口(シャドーAI、AIエージェントの権限、委託先と連携SaaS)と、それぞれで漏洩が起きる構造が分かる
  • AI活用を止めずに情報を守るために、運用で打てる4つの手(環境の提供/権限の最小化/棚卸しの定例化/委託先確認の更新)が持ち帰れる

生成AIを業務で使うことは、すでに特別な取り組みではなくなりました。一方で、2026年に入ってからも、企業や団体による情報漏洩の公表は相次いでおり、IPA(情報処理推進機構)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれ、3位に入りました。本稿では、生成AI時代の情報漏洩がどこから起きるのかを、入力ルールではなく導入後の運用の視点から捉え直します。

生成AIの導入や全社展開を進める情報システム部門・DX推進部門の方々、AI活用のルールづくりや委託先管理を担う部門責任者の方々、そして日々の業務でAIを使うビジネスパーソンの方々に読んでいただけると実り多い内容となっています。読み終えたとき、自社のAI利用において「どこから情報が漏れうるか」を点検する視点と、AI活用を止めずに情報を守るための4つの打ち手が、実務で使える形で手元に残るはずです。

0. はじめに

社内の生成AI利用ルールを整え、入力してはいけない情報を定め、研修で周知も終えた。それで情報漏洩への備えはひと通り済んだ、と考えている企業は少なくないはずです。こうしたルールの整え方については、過去の記事:「生成AIを業務利用するとき、最初に整えたいセキュリティと社内ルール」がございますのでご一読ください。

このルールは今も欠かせません。ただし、それだけで足りたのは、AIが「人が文章をコピペして使う道具」だった時期までです。AIが社内システムや顧客データとつながって動き始めた今、情報が漏れる入口は、人の入力の外側にも広がっています。

あらかじめお伝えしておくと、本稿は生成AIの利用を制限すべきだという立場ではありません。業務でAIを使わないという選択肢は、現実的ではないと考えています。問題となるのは、導入時に整えたルールと審査だけで情報を守れていると考えてしまうこと、つまり「対策は導入時に済んだ」という思い込みです。 そこで本稿では、生成AI時代の情報漏洩の入口を「人」「仕組み」「外部」の3つに分けて整理し、導入後の運用で効く打ち手をご紹介します。

1. 生成AI時代に広がった3つの入口

まず、生成AIの使われ方がどう変わったのかを押さえます。変化が大きいのは、次の3点です。

  • 社内システムとの接続:メール、ファイル、顧客管理システムとつながり、AIが自ら情報を読みに行けるように
  • 操作の実行:指示を受けて、検索・更新・送信までを人の手を介さずに実施できるように(AIエージェント)
  • 外部サービスへの組み込み:業務で使うSaaSや委託先のサービスに、AI機能として組み込まれるように

いずれも、AIを「使う道具」から「つながって動く仕組み」へと変える動きです。人が何も入力しなくても、AIが読める情報、AIが動かせる権限、AIが組み込まれた外部サービスを経由して、情報が外に出る可能性があります。

ここからは、生成AI時代に広がった3つの入口を順に見ていきます。

➣ 入口①「人」|禁止しても使われるシャドーA

1つ目の入口は、会社が把握していないAIの利用、いわゆるシャドーAIです。シャドーAI自体は以前からある問題ですが、無料で手軽に使える生成AIによって、その範囲と頻度が大きく広がっています。ガートナージャパンが2026年6月に発表した調査によると、シャドーAIを「把握できていない」企業が43%、「把握しているが有効な対策を取れていない」企業が30%で、合わせて73%の企業が有効に管理できていない状況でした。

典型的なのは、次のような使い方です。

  • 文字起こし:会議の録音を、個人で登録した文字起こしサービスに読み込ませる
  • 翻訳:社外秘の契約書を、無料のAI翻訳にかける
  • 共有:AIとのやり取りを取引先に見せるため、共有リンクを発行する

いずれも悪意はなく、業務を早く終わらせたいという動機から生まれています。だからこそ、「禁止」の通達だけでは止まりません。会社が用意したツールが業務に合っていない、欲しい機能がない、申請に時間がかかる。こうした状況が続く限り、利用は会社から見えないところへ移るだけです。

シャドーAIは、個人のルール違反として扱うと対策を誤ります。許可されたツールでは業務が回らないという、業務設計の問題として捉える必要があります。

➣ 入口②「仕組み」|AIエージェントに渡した権限

2つ目の入口は、AIエージェントに渡した権限です。情報を読み、書き換え、送信できる権限があるからこそAIエージェントは便利に使えますが、その権限はそのまま漏洩の経路にもなります。

2025年には、海外の大手CRMベンダーが提供するAIエージェントで、問い合わせフォームに仕込まれた命令文にAIが従い、顧客管理システム内の情報を外部へ送り出しうる脆弱性が報告されました(現在は修正済み)。この事例から読み取れることを、3点に整理します。

  • 疑わずに実行する:人であれば当たり前に不審に思う指示でも、AIは指示として実行しうる
  • 外部の文章を読む:AIが参照するメールやフォーム、Webページには、攻撃者も書き込める
  • 権限が被害の範囲になる:AIに渡した権限の範囲が、そのまま情報が漏れうる範囲になる

IBMの「Cost of a Data Breach Report 2025」でも、AIに関わるセキュリティ事故を報告した組織の97%で、AIに対する適切なアクセス制御が整っていなかったとされています。

部下に仕事を任せるときは、任せる範囲を決め、承認の手順を設けます。AIへの任せ方と責任の持ち方については、過去の記事:「AIの最大活用と部下育成の共通点とは?」にて整理しています。AIエージェントに渡す権限も、同じ考え方で設計できます。新入社員に、初日から全顧客データの閲覧権限と社外へのメール送信権限を渡す会社はありません。AIに対して、それに近いことが起きていないかを確かめる必要があります。

➣ 入口③「外部」|委託先と連携SaaSの先で起きていること

3つ目の入口は、自社の外側です。IPAの10大脅威でも、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃は8年連続で選ばれ、2026年は2位でした。近年報道された事案にも、次のような類型が見られます。

  • 持ち出し先での被害:委託先が預かったデータを自社の環境に持ち出し、そこがランサムウェアの被害を受けた
  • 連携アプリ経由の流出:業務システムと連携する外部アプリが不正アクセスを受け、顧客情報が流出した
  • 委託元への波及:委託先のシステムが被害を受け、複数の委託元に影響が広がった

ここに生成AIが加わると、委託元から見えない部分がさらに増えます。委託先の担当者が、預かった資料を要約や翻訳のためにAIへ入力しているかもしれません。利用中のSaaSがアップデートでAI機能を追加し、預けたデータをAIで処理し始めているかもしれません。どのデータが、どのAIに、どの条件で渡っているのか。この問いに即答できる委託元は多くないはずです。

一方で、委託先に求めるセキュリティチェックシートは、AIが普及する前の項目のまま使われていることが少なくありません。AIに関する項目がなければ、委託先がどれほど誠実でも、委託元は確認のしようがないのです。

2. 運用で効く4つの打ち手

ここまでの3つの入口には、共通点があります。いずれも、会社が把握していないところで、AIの利用や権限、データの流れが日々変わっていくという点です。シャドーAIは審査を経ずに使われ始め、AIエージェントの権限は使ううちに膨らみ、委託先やSaaSのAI機能は知らないうちに追加されます。ルールの周知や導入時の審査だけでは、こうした変化までは追いかけられません。運用の中で起きるズレは、次の3つに整理できます。

  • ツールが増える:現場が新しいAIツールを個人で使い始めたり、既存のSaaSにAI機能が追加されて初期設定で有効になっていたりと、把握すべきAIが日々増えていきます。
  • 権限が膨らむ:AIエージェントに権限を足す依頼は日々発生しますが、使わなくなった権限を外す依頼はほとんど出ません。
  • 人が入れ替わる:担当者が個人で発行したAPIキーや連携設定は、本人が異動・退職しても残ります。

AIは導入も接続も簡単な分、こうした変化がこれまでより速く積み重なります。AIの情報漏洩対策は、導入時の審査やルールの周知だけでは完結しません。

では、運用の中で何をすればよいのでしょうか。AI活用を止めずに情報を守ることを前提に、4つの打ち手をご紹介します。

➣ 打ち手① 「禁止」より「安全に使える環境」を先に用意する

シャドーAIへの対策の基本は、許可されたツールで業務が回る状態をつくることです。まず、現場でよく使われている用途(文字起こし、翻訳、要約など)を把握し、それに応える公式ツールを用意します。そのうえで利用状況を可視化し、見えない利用を見える利用へ置き換えていきます。ガートナーも、「IT部門が選定したAIのみ利用を認める」という従来の方針を見直すよう提言しています。

➣ 打ち手② AIエージェントの権限は最小から始める

エージェントに渡す権限は、読み取りのみから始め、必要に応じて段階的に広げます。特に、次の操作には人の承認を挟む設計にしておきます。

【人の承認を挟むべき操作】

  • 社外へのメール送信や、データの書き出し
  • 顧客データの一括取得や削除
  • 外部のWebページやフォームから取り込んだ内容を起点とする操作

➣ 打ち手③ 連携と権限の棚卸しを定例化する

APIキーや認証トークンには有効期限を設け、個人ではなく組織の管理下に置きます。そのうえで、四半期に1度など頻度を決めて、「どのAIが、どのシステムに、どの権限でつながっているか」を棚卸しします。異動・退職の手続きに、AI連携の引き継ぎと停止を組み込んでおくのも有効です。

➣ 打ち手④ 委託先の確認項目にAIを加える

委託先へのセキュリティチェックシートに、AIに関する項目を追加します。最低限、次の3点は確認しておきたいところです。

  • 業務でAIを利用しているか。利用している場合は、どのサービスか
  • 預けたデータが、AIの学習に使われる設定になっていないか
  • AI機能の提供元への再委託にあたる処理が含まれていないか

4つの打ち手は、いずれも新しいセキュリティ製品の導入ではなく、運用の設計です。導入時に一度決めて終わりにせず、定例の業務として回し続けることで、はじめて効果が出てくるものです。

3. おわりに

生成AIの情報漏洩対策は、「何を入力しないか」というルールから始まりました。ただ、AIが社内外のシステムとつながって動くようになった今、漏洩の入口はその外側に広がっています。

本稿で述べた3つの入口と運用で効く4つの打ち手を、改めて整理します。

3つの入口

  • 人:禁止しても、業務を回すためにシャドーAIが使われる
  • 仕組み:AIエージェントに渡した権限が、そのまま被害の範囲になる
  • 外部:委託先や連携SaaSの先で、データがどのAIに渡っているかが見えない

運用で効く4つの打ち手

  • 「禁止」より「安全に使える環境」を先に用意する
  • AIエージェントの権限は最小から始める
  • 連携と権限の棚卸しを定例化する
  • 委託先の確認項目にAIを加える

3つの入口に共通するのは、会社が把握していないところで、AIの利用や権限、データの流れが変わっていくという点です。だからこそ、対策の中心も「導入時の審査」から「運用の仕組み」へ移す必要があります。

セキュリティを経営の戦略として捉える視点については、過去の記事:「見えない脅威とどう向き合うか:2025年サイバーセキュリティ戦略」にて述べています。次に社内でAIの活用を広げるとき、「どのAIが、どのデータに、どの権限でつながっているか」を、まず一覧にしてみてください。その一覧をすぐに作れるかどうかで、運用で情報を守れている組織か、導入時の審査で止まっている組織かが分かれます。

ファーストデジタルでは、AI事業本部を中心に、AIガイドラインの策定やガバナンス強化のご支援を行っています。AIの利用ルールや運用の仕組みの見直しをご検討の際は、お気軽にご相談ください。

Profile

中山 裕貴Analyst, Consulting Business Division

神奈川大学卒業後、IT業界にて開発エンジニアやプリセールスとして、放送制作・金融業界を中心として海外企業との豊富な折衝経験。開発領域ではコンピュータストレージ製品を制御するソフトウェアの開発・検証・ログ解析に従事し、主に検証・ログ解析やWindowsOS/UNIX系のサーバーOS検証環境の構築、検証、検証報告書の作成を担当。
2025年からファーストデジタルにジョイン。​

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