2023.05.24

【書評】眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学

  • 社会心理学
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【書評】眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学
インプットポイント
  • 社会の中での人の心の動きや行動の法則がわかる。
  • 組織パフォーマンスの向上や、マーケティング施策の立案等、「人」が関わるあらゆる局面でヒントとなる。

接客、営業、企画、マーケティング、クリエイティブ、採用。これらの共通点は何だろうか。

もちろん答えは様々だが、その一つが「人との関りの中で営まれる活動である」ということだ。むろん、その主人公たるあなた自身もまた人である。

社会の中で人が起こす行動の原理・法則を知っているのと知らないのとでは、様々な局面において成果や結果に差が出ることだろう。

その手掛かりが、社会心理学にある。

今回ご紹介する書籍(眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学)は、社会心理学の基本を無理なく押さえることができるものとなっている。 自身や組織のパフォーマンスを向上させたい方や、対外折衝を優位に運びたい方など、幅広い方にお読みいただきたい。

出版社:日本文芸社
発売日:2019/8/27
著者:亀田 達也

【著者紹介、書籍の特徴】初めて学ぶ者にもわかりやすいよう、図解と具体例で社会心理学のエッセンスをまとめている。

著者(亀田 達也)は東京大学大学院社会学研究科修士課程、イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了、 Ph.(心理学)。現在は東京大学大学院人文社会系研究科社会心理学研究室教授。心理学に関する著書を多数手がけている。

本書の特徴は、大きく以下の3点である。

  • イラストを用い、ハロウィンの暴徒化等の身近な具体例も交えながらわかりやすく解説している
  • 「囚人のジレンマ」「オペラント条件づけ」等、基本的な用語が一通りカバーされている
  • ネガティブな法則に対しては、それに陥らないための工夫もセットで述べられている

【目次と要旨】

本書のカバーするテーマは多岐に渡り、どのような目的をもって社会心理学に向き合うかによって、重要なポイントは変わってくる。

ここでは、章立てを紹介するとともに、特に個人/組織のパフォーマンスやビジネスへの関連が強いと感じた内容を中心に要旨をまとめるものとする。

第1章 社会現象と心理学

本章では、よくある社会現象にどのような心理が作用しているかを解説している。

・人は多数派や権威のある人物の意見に同調・服従しやすい。(同調)

・たとえ緊急事態でも、他人が行動しないと疑念が抑制されて自分も行動しない(多元的無知)

第2章 組織・集団の心理学

本章では、組織、集団、あるいはそれに帰属する個人が抱く心理や起こす行動の傾向を解説している。

・個人に比べ、集団での意思決定は実は偏った結果になりやすい。(集団極化)

・集団になると、個人では起きなかった判断の誤りが起きやすくなる。(集団的浅慮/プロセス・ロス)

・上記を回避する方法の一つは、特定のメンバーに反対意見を述べる役割を担わせること。(悪魔の擁護者)

・少数派が多数派の意見を変えるには、争点を絞ること。(少数者影響過程)

第3章 職場における心理学

本章では、特に職場にフォーカスし、組織や個人が抱く心理や起こす行動の傾向を解説している。

・習熟したタスクを人前で行うと効率が上がり、未習熟のタスクを人前で行うと効率が下がる。(社会的促進・社会的抑制)

・要求を通したい場合、ハードルの低いことから徐々に段階的に承諾させるといい。(一貫性欲求)

・人は自らの意見を肯定されると、ますますその意見を強く持つ。(オペラント条件付け)

・生産性向上に寄与するのは労働条件よりも人間関係である。(ホーソン効果)

・報酬がモチベーションの低下を招くケースがある。(内発・外発的動機付け/アンダーマイニング現象)

第4章 個人と対人認知の心理学

本章では、特に個人にフォーカスし、社会活動の中で抱く心理や起こす行動の傾向を解説している。

・人は自分の下した判断や取った行動を一般的だと思う傾向をもつ。(フォールス・コンセンサス効果)

・人は何かを素早く選択する際、典型的な特徴(見た目/価格等)を切り口にする場合と、自身にとって入手しやすい情報(よく見かける等)を切り口にする場合がある。(代表性・利用可能性ヒューリスティック)

・流行に敏感な人と逆らう人はどちらも独自性を重視し、ある程度浸透してから流行に乗る人は同調性を重視している。(独自性/同調性)

・説得に重要なのは、受け手側に知識がない場合はメリットのみを提示すること、ある程度の知識が備わっている場合はデメリットも併せて提示すること。(一面的・両面的メッセージ)

第5章 社会のあり方と心理学

・人は長期的な関係性や信頼関係を気付いている相手に対しては協力的になる。(囚人のジレンマ)

・人は他者から何かを享受すると、それに報いたくなる。(互恵的利他主義)

・個人の利益を追求すると社会全体の利益を損なう場合がある。(社会的ジレンマ)

【感想】読了後に即実践が可能な良書だが、逆説的な活用も有効。

書物によるインプットは、その後の実践を伴って初めて意味を持つ。その点では、本書は集団や個人がとる行動のリスクや問題点を挙げるだけでなく、即実践可能な形で解決策まで提示しているため、評価できる。

たとえば、個人では正しい判断を下せるはずの事柄に対し、集団になるとかえって誤った判断を下してしまう「集団的浅慮」というリスクがある。これに対して著者は、「集団での意思決定の過程では、多数派の同調圧力によって、反対意見を言い出せない空気が作られることがあります。誤った意思決定を避けるためにも、自由に意見を言える空気づくりが大切になってくるのです」とし、オピニオンダイバーシティに富む風土の醸成が必要であることを示唆している。

ただし、もう1歩踏み込んだクリティカルな読み方をすると、さらに本書のインプットを有効に活用できるかもしれない。

「集団的浅慮」を再び例に挙げよう。著者は「自由に意見を言える空気づくりが大切」としている。もちろんそれも重要なことで、当社もまさに取り組んでいることだ。だが一方で、例えば当社のようなコンサルティングファームでは、そもそも「自分が少数派で反対意見も出るかもしれない中でも、しっかりと自身の主張を述べることができる力」も重要になる。つまり、「集団的浅慮」を回避するもう一つの方法として、「集団的浅慮が起きないような人材の採用段階での見極め」も挙げられると考える。

このように、インプット段階での視点の持ち方次第で、読了後のアウトプット/アウトカムの幅が変わってくる。

本書の良さを十二分に活かすためにも、是非読み方は工夫していただきたい。

まとめ

社会心理学を学ぶことで、自身の抱く心理や取る行動を第三者視点で俯瞰できるようになり、様々なビジネスシーンで適切な判断が下せるようになるはずだ。もちろん、他者の行動をつきうごかす心理もわかるため、例えばマーケティングの精度向上にもつながるだろう。今起きている社会問題も、その裏では社会心理学が作用しているかもしれない。

本書をきっかけに、ビジネスの成功や課題解決につながる新たな気づきを得ていただきたい。

Profile

植野 峻彰Senior Consultant
慶應義塾大学卒業後、服飾関連の製造小売企業に入社。その後、化粧品関連の商社にて、主にマクロを駆使した社内外のRPA、およびDXプロジェクトに参画。2021年から株式会社ファーストデジタルにジョイン。
植野 峻彰
植野 峻彰
この記事は植野 峻彰が執筆・編集しました。

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