2023.10.04

【書評】頭のいい人が話す前に考えていること

  • コミュニケーション
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【書評】頭のいい人が話す前に考えていること
インプットポイント
  • 頭のよさは何で決まるのか?
  • なぜ相手に伝えたいことが伝わらないのか?

「ビジネスやプライベートにおいて最も重要なスキルとは?」と問われたら、「コミュニケーション能力」と回答する人は多いのではないだろうか。

世の中には多くのコミュニケーションに関するノウハウ本が溢れている。雑談力・対話力・聞く技術など‥。私は普段から読書をすることが多いので、このような本をこれまでに多く読んできた。しかし、読んでみても「ちょっと違うんだよな」と感じることも多かった。

その原因の1つはコミュニケーションの本質というよりは、テクニック寄りの内容が多かったからだと感じている。本質は理解するのに時間がかかるしすぐに実践することは難しい。一方、テクニックであれば読者はすぐに使えそうだと感じるので、結果的に本も売れやすいというのが個人的な感想である。

本書は今、かなり売れているようだがその理由の1つは、これまでなかなか言語化・体系化されてこなかった、話す時ではなく、「話す前」にフォーカスを当てているからだと推察される。コミュニケーションの本質が体系化されており、アクションプランも提示されているのですぐに本書の内容を意識して実践することができる。

出版社:ダイヤモンド社
発売日:2023/4/19
著者:安達 裕哉

ビジネスだけでなくプライベートにおけるコミュニケーションで大切なことについて学ぶことができる。

【著者紹介、書籍の特徴】

本書は、ビジネスやプライベートにおけるコミュニケーションの基礎の基礎を解説している。「基礎の基礎」と記載したのは、当たり前すぎてほとんどの人は意識ができていないことである。しかし、頭のいい人にとっては話す前に普段から考えていることだ。

例えば、本書には下記のような興味深い質問がある。

デートで買い物中、相手からこう聞かれたら、あなたはどう答えますか?

「青と白のどっちの服がいいと思う?」

答えを見れば、「たしかに言われてみればそうだよね」と納得できると思うが、日常では意外とできていないことである。本書には、このような事例を中心にビジネスやプライベートにおける重要なコミュニケーションの方法について紹介されている。

※正解は本記事の後半で。

【目次と要旨】話す前に少し立ち止まって、7つの黄金法則と5つの思考法の中のひとつでもいいので意識する。そうすることで、明日から話すたびに頭がよくなる。

第1部 頭のいい人が話す前に考えていること ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則

その1 とにかく「反応」するな

その2 頭のよさは、「他人」が決める

その3 人はちゃんと考えてくれてる人を信頼する

その4 人と闘うな、「課題」と闘え

その5 伝わらないのは、はなし話し方ではなく「考え」が足りないせい

その6 知識が「だれか」のために使って初めて知性となる

その7 承認欲求を「満たす」側に回れ

結局、どれだけ話し方がうまくなっても、自分の言葉で話せないと人の心を動かすことはできない。話す前の考え方を変えれば、自然とその人に合った話し方で、自分の言葉で話すことができる。

話す前にちゃんと考えることで、言わなくてもいいことを言ってしまうことがなくなる。コミュニケーションに苦手意識がある人こそ、話し方を変えるのではなく、「ちゃんと考える」ということに意識を向けてみてほしい。

第2部 一気に頭のいい人になれる思考の深め方 ―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法

第1章 まずは、バカな話し方をやめる ――「客観視」の思考法

・話が浅くなる3つの理由は、「根拠が薄い」「言葉の意味・定義をよく考えずに使う」 「成り立ちを知らない」。

→バイアスに意識的になり、自分と反対の意見や統計データにあたることで思考を深める。「問題・課題」等、身近な言葉の微妙な違いに敏感になることで、思考の解像度が上がり、見えている世界も、伝わり方も変わる。成り立ちを知ることで、人と違うアイディアも深い議論も生まれる。

第2章 なぜ、頭のいい人の話はわかりやすいのか? ――「整理」の思考法

・頭のいい人がたとえ難しい話でもわかりやすく話せる理由は、「物事の本質を理解できている」から。

→本質を理解していない場合、いくら話し方を注意しても、わかりやすく話すことはできない。わかりやすそうな話をしているだけで、わかりやすい話にはならない。話のわかりやすさは、理解の深度で決まり、理解の深度は、どれだけ分けて整理できるかで決まる。自分のしたい話ではなく、相手の聞きたい話から話して、相手の聞くスイッチを入れる。

第3章 ちゃんと考える前に、ちゃんと聞こう ――「傾聴」の思考法

・人の話を聞いているときに、「反論」で頭がいっぱいになってしまうことなど、次に自分が話すことで頭がいっぱいになっている人がいる。

→ちゃんと話を聞ける人は、「相手が言いたいことは何か」を考えながら、まずは相手の話を正確に理解しようとする。アドバイスしたいときほど、相手の話を整理しながら正確に聞く。整理のポイントは、「ゴールの確認」「考えていることを聞く」「話を整理して相手の意思決定を助ける」の3点。

第4章 深く聞く技術と教わる技術 ――「質問」の思考法

・相手のことを深く理解するには、質問を駆使して話を引き出す必要がある。

→深く聞くには以下の5つの質問をすることで、相手の話を掘り下げることができる。

 「何をしたんですか?」(過去の行動)

 「そのとき、どんな状況だったんですか?」(状況の深掘り)

 「その状況でどうしたんですか?」(行動の深掘り)

 「その結果どうなったんですか」(成果・結果の深掘り)

 「今度仮に、こういう状況になったらどうしますか?」(仮定の状況における行動)

第5章 最後に言葉にしてインパクトを残す ――「言語化」の思考法

 ・「とりあえず電話」を嫌う人がいるのは、「言語化する」というコミュニケーションコストを、目の前の作業を中断して、相手のために支払わないといけないから。

→言語化のコストを進んで払う側に回る。ちゃんと考えるとは、突き詰めれば、人を動かすアウトプットを生み出すということ。インパクトを残すアウトプットのためには、良質な言語化が必須であり、良質な言語化のためには、1~4章に掲載されている方法で思考を深める必要がある。

【感想】コミュニケーションのテクニックではなく、「話す前に考えるべきこと」について本質を学ぶことができる。

「身近な人にほど丁寧なコミュニケーションを心がけてほしい」。

これが本書を通じて筆者が伝えたいメッセージである。

仕事においては、定期的にミーティングをするクライアント、毎日連絡を取り合うような同僚。さらにプライベートでは友人や家族など、初対面ではない相手とのコミュニケーションというのは、緊張せず自然体でコミュニケーションを取れているのではないだろうか。

読者が「コミュニケーションは得意である」、という自覚があれば本書は不要かもしれないが、「コミュニケーションに苦手意識がある」「上司とのコミュニケーションを改善させたい」等の悩みが少しでもあれば本書をおすすめしたい。

話す前に意識すべきことが本書には網羅されているので、コミュニケーションを向上させるためのヒントを得られるはずである。私は現在、フルリモートワークという勤務形態のため仕事上で顔を合わせる機会が少ない。そのため、対面以上に丁寧なコミュニケーションを心がける必要があると感じている。そこで、本書に書かれているポイントを1日1つは意識して仕事を進めていきたい。

まとめ

本記事の前半で掲載した質問「青と白の、どっちの服がいいと思う?」の、ダメな回答例は以下である。

「白がいいと思う」などと、何も考えず、直感的に自分がいいと思うほうを答えること。

私は男性なので男性目線になってしまうが、このように回答してしまう男性は多いのではないだろうか。

しかし、本書ではここまでの解説も踏まえ、模範解答を以下のようにしている。

「白と青、それぞれ、どこがいいと思ったの?」

このように、自分が感じた結論をストレートに伝えるのではなく、「相手が言いたいことは何か」を考えながら、まずは相手の話を正確に理解しようとすることが必要である。

仕事上だけでなく、プライベート上の会話でも本書の内容を実践する機会は多くあるので、日々意識をして、周りから「頭がいいと思われる人」を目指してほしい。

マガジン編集部
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この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。

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