2024.02.07

【書評】生成AI時代の「超」仕事術大全

  • 生成AI
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【書評】生成AI時代の「超」仕事術大全
インプットポイント
  • 生成AIを活用した仕事術が分かる
  • 生成AI時代に身に着けるべきスキルが分かる
  • 生成AIのリスク/脅威とその対策が分かる
  • 生成AI時代の未来が分かる

2022年11月にChatGPTが公開され生成AIが話題になっているが、生成AIでどこまで実現できるのか、実際の利用の仕方など、活用イメージがついていない人は多いのではないか?

実は私もその一人であり、今回本書籍を読み、自身の理解を深めるとともに本記事にまとめる。

出版社:東洋経済新報社出版
発売日:2023/11/1
著者:保科学世/アクセンチュアAIセンター

【書籍の特徴】生成AI時代に必要な知識・スキル・取り組み・今後の動向等、生成AIに関する事柄が網羅的に理解できる

本書は、生成AIやChatGPTの原理・使い方からリスク対策方法、身に着けるべきスキル、社会へのインパクトと生成AIがもたらす未来についてまで、生成AIと時代を共にしていくためのスキルと知識について網羅的に解説している。さらに、各内容に関する例示に具体性があり、実践的なアドバイスが多くこれからの時代を生き抜くヒントが多く記されている。

【目次と要旨】生成AIのリスクと脅威を理解し、人間とAIの得意な領域を見極め、本質的な取り組みを行うことが重要である

生成AIは自然言語を理解し、創造性や対人コミュニケーションまでカバーする革命的な技術であり、ホワイトカラーを中心としたビジネスシーンのみでなく、あらゆる場面での活用が期待されるが、生成AIの活用には様々なリスク/脅威が潜んでおり、それらを理解し軽減する施策・取り組みが重要となる。効率化のみを追求し、何でもAIに置き換えるのではなく、「人間が得意なところ」と「AIが得意なところ」の役割を見極め、人類の幸せを最大化するためAIを活用すべきである。今世の中では多様性が重要であるが、この多様性の中に様々なAIも加わることでよりよい選択肢を我々は手にすることができるが、各々が多様な世界観それぞれの本質を見つめ、本当に大切なものを考え続ける必要ある。

Prologue 生成AIがもたらす「地殻変動」

ChatGPTの登場は世界に衝撃を与えたが、ジョークを理解した受け答えなど言語の複雑性を解読し、大量のデータを事前に学習し幅広いタスクに対応できる柔軟性があることと、プラグイン機能によりプログラミング開発不要で利用できる仕組みが構築されている。また、生成AIはテキストでのアウトプットのみでなく画像/動画/音声へのアウトプットも柔軟であり、言語でイメージを伝えるとイメージに近いデータを生成できる。

<PART1 仕事編>

CHAPTER 1 ツールとしての生成AIの活用

生成AIのビジネスへの活用シーンとしては、アイディア生成/文章校正/文章要約/メールの返信/コード生成/レジュメ・カバーレター作成/プレゼン資料作成/画像生成などがあるが、生成AIを活用する際にはより効果的なプロンプトを作成しAIの能力を引き出す必要がある。また、LLM(大規模言語モデル)は高度な能力を持つが真偽の判断やバイアスの有無に対する判断ができないため、そういったリスクを回避するためにもプロンプトの工夫が必要となる。

CHAPTER 2 生成AI時代に求められるスキル

生成AIの活用に必要なスキルは以下の3つである。

・人間がAIを補完するスキル:人間とAIの役割分担、人間とAIの協働する業務への定着化、アウトプットへの総合判断

・AIに人間の力を拡張させるスキル:合理的質問(プロンプトエンジニアリング)、AIの拡張、AIの使いこなし

・人間とAIのハイブリット活動:人間とAIの相互学習、技術の変化に応じた継続的な再設計

CHAPTER 3 生成AIにおけるリスクと対策

生成AI活用の上で以下のようなリスクが考えられる。

・外部環境におけるリスク:法規制/レビュテーションリスク(ブランドイメージ棄損)

・内在するリスク:著作権の侵害/個人データの取り扱い

・インプットにおけるリスク:入力情報の漏洩(機密情報/個人情報)

・アウトプットにおけるリスク:不確実な知的財産/誤情報の混入/差別・偏見・問題発言の混入/悪用のリスク

各リスクを理解した上で、AI利活用において守るべき行動規範を定め、入力・出力データの確認、生成AI利用時にツールの目的や規約を確認するなど、リスクの軽減策に取り組む必要がある。

<PART2 仕事の未来編>

CHAPTER 4 生成AIがもたらす4つの革命

生成AIにより、以下の4つの革命がおこると考えられる。

・ハイパーオートメーション:不測の事態にも自動で対応可能

・ハイパーパーソナライゼーション:商品やサービスを個々に合わせて生成

・ハイパーコミュニケーション:複数の言語・ドメイン・専門分野の壁を越えた相互理解

・ハイパーデジタルヒューマン:仮想人格の生成

CHAPTER 5 生成AIの社会へのインパクト 【業界編】

業界全体の労働時間の約40%がLLMの影響を受ける可能性がある。銀行・保険・証券といった金融サービスや公共サービス、ソフトウェア&プラットフォームといった業界は言語タスクの割合が非常に高いため、LLMによる影響も非常に大きい。電力・ガス・化学・石油・天然資源などのリソース系や、産業機械・消費財・サービスといった製造系の業界については言語タスクの割合が半分未満であるが、天然資源系であっても25%のタスクは大きな影響があるとされている。また、業務効率化だけでなく、顧客・従業員体験の向上やプロセスの最適化にも大きく影響する。

CHAPTER 6 生成AIの社会へのインパクト 【職業・生活編】

業界別と同様に職業別においても、全体の労働時間の約40%がLLMの影響を受けると予想されている。事務員、営業・販売、コンピュータープログラマー、経営・金融アナリスト・会計士、デザイナー・ライター・通訳・翻訳者などの職業においては言語タスクの割合が非常に高く、LLMの影響が50%以上となるが、ホワイトカラーだけでなくブルーカラーの職業への影響も出るとされている。

CHAPTER 7 生成AIのもたらす未来

生成AIは人・業務・企業単位への影響のみでなく人類全体に対しても、ハルシネーション、詐欺・テロ等への悪用、生成AIを使いこなせるか否かによる格差拡大等、様々な多大なリスクがあると考える。これらのリスクに対して個々人のみでなく、政治の介入・国際的な協力のもと対策を行っていく必要がある。また、生成AIを活用して私たちが目指すべき未来は労働不足の解消、地方創生等の社会課題の解決であり、理想の仕事・暮らし・コミュニティを形成することができる。

【感想】業務に活かす場合、生成AIをどの業務に活用するか、リスクに対してどう対策するか決めておく必要がある

本書から、生成AIがどれほど広範囲かつ高度に活用可能であるか、そのリスクも含め充分に理解できた。今後、各企業で生成AIの導入が進んでいくと思うが、導入するだけでなく活用場面/目的の明確化、利用のためのガイドライン作成等、正しく活用するための取り決めや意識合わせがとても重要であると感じた。

また、人間とAIが共存する未来になるにつれ人間とAIは役割分担し、人間は「人間が得意なところ」を担っていくことになると思うが、その業務に必要なスキルの難易度がかなり高いのではないかと感じた。本書のCHAPTER2に「人間らしさの価値が増す」と表現されており、人としての意思と情熱・共感、人を動かすリーダーシップ、課題を解決するのではなく課題そのものを発掘する力などが必要とされているが、そのようなスキルをもっている人材が回りにどれほどいるだろうか。今でさえ、日々新ツールへの適応やマルチタスク能力が求められ、インターネットが無かった時代に比べ能力主義の社会ができているにもかかわらず、さらに高度な技術の活用が求められる時代となり、より多くの人間を適応させるための仕組み作りがとても重要であると感じた。

まとめ

ともかく、まずは生成AIを導入してみることから始めるべきである。ChatGPTの登場により生成AIを知っている人は多いが利用している人は少なく、企業でも試験利用してみるものの導入には至っていない場合が多いようである。本書では生成AIの利活用とともにリスクについても充分に解説されていたが、一方で生成AIを上手く活用できれば全世界的に生産性が向上し、お金のために働かなくてもいい時代が来るシナリオも考えられる。人は個々人の課題・問題意識・夢・理想・意思・情熱・ワクワクすること・ドキドキすることに立ち返って仕事を選択することができるようになり、本当のサステナブルな社会の実現が目指せるかもしれない。

マガジン編集部
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この記事はマガジン編集部が執筆・編集しました。

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